研究会5|議事メモ

第5回TARL評価ゼミ研究会
日時:2010年12月22日(水)19時-
場所:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
内容:
1)前回の議論の振り返り
2)これまでの議論の図式化

以下は、ディスカッションの話題を中心にまとめています。

■ 個人まとめ:石田(佑)の図
・ ステイクホルダーをプロジェクトの運営者中心にまとめた。
・ それぞれにどんな指標がありえるのかを図式化した。
・ 行政を大きなもの(国など)と小さなもの(自治体など)の2つに分けた。
・ 今回は不参加者へのアンケートを考えずに描いてみた。
・ アーティストからのプロジェクトの評価が一番大事だと思う(アーティストに面白い人がいることで地域づくりへもつながっていくのではないか)。
・ 自己評価は入れるべき。プロジェクト運営者がそれぞれのステイクホルダーに伝えることを第一条件にしたい。
・ アーティストにプロジェクト終了後、「本当はこうしたかった」ということを聞く。あらためて場を設定することからポイントを捉える。
・ 観客アンケート:TwitterやSNSを使えば気軽に意見が聞けるのではないか。
・ 財団、行政はエピソード評価などいろいろあったほうがいいが、コストを理解した上で、どういう人からの意見がほしいかを事前に決めておければいい。そのうえで、投入できる資源を勘案して指標を設定する。
・ 担当者は現場でのヒアリングを行なう。できれば行政や企業の担当者がボランティアや地域住民と話をする機会をもつ。
・ 企業や財団は醸成対象者を選ぶ(選考が事前評価)。市区町村レベルだと打合せや日常的なディスカッションがあるから、いろんな材料を出す必要はないかもしれない。
・ コストの範囲内での評価について事前に関係者で決めてやること。アーティストからの事後評価をやるようにして、ステイクホルダーに伝える。
・報告書は地域住民などは読まない。行政担当者などへの説明責任の材料となっていくため、ここで評価指標を決めていけばいいのではないか。
・ 評価はそれぞれのパート(アクターとの関係)に分散されているのではないか。

■ アーティストと行政の評価
・ アーティストから不満を聞く。それを行政に伝える。アーティストの要求を無視してはいけないということを主張してほしい。
・ 率直に難しいと思う。その難しさがどこにあるのか。
・ 言葉がそもそも通じない。生きている言葉の世界が違う。
・ 客観的な評価ではなく、責任のなすりつけあいになってしまう危険性。徹底的にやってしまうと「来年からはやめてしまおう」となってしまう。
・ アーティストが不満を言うこと=作品をよりよくすること。行政が思うことは「アーティストがベストを尽くすのは前提として、社会にどんな意義があるのか」ということ。そもそも軸が違う。
・ 行政はアーティストという存在に不信感を抱いている、と言われる。多くを要求するし、約束は守らない、という。不信のシステムの真ん中にいる感じ。
・ 神山に行ったときに「評価はしていない」と言われた。行政と密なコミュニケーションができているから、それは必要とされていないのか。
・ 異動が多いと紙の資料でしかコミュニケーションがとれない。
・ 行政にも、担当者なのか、自治体全体なのか、と層がある。

■ 行政の思い描くイメージ
・ 行政が思い描いた地域住民像とのギャップがあるのではないか。たとえば、現在のコミュニティの状況があって、いい方向にもっていこうとする。そこで、思い描いているコミュニティ像が違っているのではないか(アーティスト像も同じではないか)。
・ そこから、かなり恣意的な評価軸をもってきてしまうのではないか。しかし、それを切った場合に、行政からお金は出なくなるが…。
・ いまはプロジェクト運営者中心で描かれているが、主体が変わることで違った描き方になってくるのかもしれない。
・ もし、ロールプレイング・ディベートをやるならば、自分の本当の立場とは違うものをやったほうがいいのではないか。

■ 広告代理店的なものとアートプロジェクト
・ 行政が一番やりたいのは、広告代理店に頼みたい。広告代理店ほどクオリティは高くないけど、それに近いことがアーティストならばできるかもしれないという思惑。
・ それに乗っかって違うものを提示しようとするアーティスト。行政とアート側が相互依存の関係。
・ 全部のジャンルで起こっている出来事ではないか。悪しきデフレスパイラル。そこから軋轢やストレスが生まれてきている。バブルの頃は代理店に発注できていたのに…。
・ それを分かって乗っかっているのか、本当に乗っかってしまっているのか。プロジェクト運営者の倫理観や、その価値(評価)にかかわってくる。
・ 上手く説明をし、場をつくって、アーティストの自由を確保していくこと。

■ アートプロジェクト・リテラシー
・ 見慣れていないとアートプロジェクトのよさが分からないかもしれない。アートプロジェクトにリテラシーが必要になるのではないか。
・ 行政担当者が現場を見て、面白さを理解してくれれば、評価担当者はいらない。でも、実際現場に来ても分からない(来場者数くらいしか)。
・ 継続や蓄積があれば、教育されていく効果はある。それが評価のいらない状態なのか(市区町村レベルで評価がいらないということ)。
・ たとえば広告代理店的なものを目指した効果から、がくんと落ちてしまったら、担当者はどう対応していくのだろうか。
・ 広告代理店的なものを求めなくなる。そうじゃない面白さに価値を転換ができるかどうかが重要になるが、そのときに別の評価軸を出さなければいけない。
・ まずは3ヶ月続けられるかどうか。その上で多様な説明をしていく。
・ 評価の手法の蓄積=あれこれ手をつくして説明されてきた歴史の地層。
・ 1970年代に叫ばれた「行政の文化化」=行政が文化を扱うだけでなく、行政の自己変革の視点もはいっていたはず。手法は複雑化しているけど、根本的なところは変わっていないのではないか。
・ 地層のような評価軸は、突き詰めればプロジェクトを守るために、恣意的で無根拠になってしまうのではないか。
・ 説明したい意味に向けて方法論を変えていくことに問題はないのでは。
・ 資本をアートに投入するということ(根拠がないものを信じなさい)ということ。

■「面白さ」をどう想定するのか/クリエイティブな手法とは
・ 多様な評価手法は、違う現実を描くための手法。関係を切り結ぶ相手とどういう現実を描けばいいのか、という手法が沢山あるということ。
・ ただ、この研究会の問題意識には「思い描きたいはずの像が従来の手法では描けていない」ということがあったのではないか。
・ これまでは「違う現実を描くこと(それで説明すること)から、こっそり実現していく」か「思い描くことができる個人がやってしまう」しかなかったのではないか。
・ アートプロジェクトは、一番話し合いたいところを話しあってしまうと実現しなくなってしまうのではないか。何かしら置き去りにして走りだしているのではないか。
・ そこが「アートの面白さ」やゼミでの「アートは評価できるのか」の議論で出てきたのではないか。でも、そうなると、見切り発車なのか、クリエイティブな方法なのか、は分からなくなってしまう。クリエイティブな独自の方法が必要だけど、何とでも言えてしまう。そこの線引きをどうしていくのか。
・ 一番遠いと思われる行政とアーティストの不信感を埋めるためには、そこをやらなければならない。

■ アートプロジェクトの面白さ
・ 表現を実現するまでの行政、地域住民やアーティストの交渉プロセスでの新しいヴィジョンをつくっていくことの面白さがあるのではないか。アートプロジェクトの形式としての可能性(アーティストの自由を実現するという従来のアーティスト観ではなく)。
・ そこの面白さに気づき始めたアーティストがいるけど、それこそがワークショップや広告代理店的な盛り上がりとして捉えられやすい。
・ その面白さを追求しながら、一方で説明をして場をつくっているプロジェクトが成功しているのではないか。
・ アートプロジェクトのマスターピースが生まれてきたのではないか。マスターピースをマスターピースとして捉えた言葉がないために、使われていく現状はあるのではないか(批評がない?)。
・ アートプロジェクトの作品が地域から離れても成立してしまうことへの疑問。
・ 「どこでもできること」(=アートのサーカス化)は悪く言うべきことなのだろうか。むしろ、地域ごとにマイナーチェンジはあったとしても、そうならないとマスターピース化しないのではないか。出力仕方は(地域によって)違うけど、フォーマットは一緒。第3者から見れば、同じように見える。
・ システムとしてアート作品であれば、そういうものなのではないか。
・ 「どこでも同じ」という批判は、アートプロジェクトの見方に慣れていないとも言えるのかもしれない(細かく見ると本当は違う)。

■ アートプロジェクトと地域
・ アートプロジェクトみたいな形式が「関係性」や「システム」というキーワードから作品が生まれてくることにつながっているのに、結果的に見えてくるときに、地域に密着していく作品の形式になっているためにそう見えてしまう。
・ 地域とアートプロジェクトを結びつけるのが、ミスリードになるのかもしれない。かならずしも「地域」と「アートプロジェクト」はイコールではないかもしれない。
・ サイトスペシフィックのアートとしてのアートプロジェクトなのか、リレーショナルアートとしてのアートプロジェクトなのか。アートがどう変化したのか、という議論がない。
・ アートプロジェクトが増えたのはミスリードのおかげ。危ういと言われるゆえんだが、明確に定義付けをしたら、呉越同舟の船が沈んでしまう。
・ アートプロジェクトの意義でよく言われるのは、曖昧だから色んな人が関わる余地があると言われる(商店街祭りではなく…というとき)。ミスリードを上手く使っているところはあるかもしれない。
・ しかし、昔ほどミスリードが使えなくなってきているのではないか(アートプロジェクトインフレ、ユーザーの気づき)。
・ ここで本当の意味での「アートの価値」を説明していけるかどうか、分岐点なのではないか。広告代理店的なものじゃないんだという価値形成まで斬り込んでいけるのか。

■ 社会とアート
・ 行政は最初の推進をしていくけど、あとはNPOなど自律的に展開していくことがありえるのではないか。
・ それでは、アーティストも運営する方も食えないのではないか。本来は市民の集合的な代表としての行政のはず。政策が地域住民を求めるものを提示するのか、潜在的なもの(少し飛び抜けたもの)を提示していくか。後者は多数決では弱くなるのでは。
・ ドイツでは「芸術の自由」がある。『ドラマトゥルク』もそのトーンで書いてあった(「見えなくなる職業」のドラマトゥルクはそれがないと成立しないという話から)。日本では、芸術のための芸術にお金が出るようになっていないのでは。

■ 個人まとめ:大川の図
・ カウンセリングを面白いなと思った。外部から言われることは、現場でやっている側は認識できている。上から目線でアドバイスするよりも(親のように色々と言うより)おじいちゃん的な存在が必要。
・ がっつりアドバイスするより、方向性を見出してくれるような人。
・ アートプロジェクトの経験を積んできたマスターのような人。
・ 自分とフラットに話をしてくれるけど、アドバイスをしてくれるような存在。
・ 色んな立場の人がいる組織は強い。みんな同じではなく違いがある(他者性)。
・ お母さん的(見守ってくれる存在)→もう少しこうやったほうがいいよね、と言ってくれるような存在。
・ おじいちゃんは業界が成熟しないと出てこないのではないか。
・ 企業のようなダイレクトに利益追求型ではなく、ゆるいアートプロジェクトだから出てくるのではないか。
・ プロジェクトのコンサルをするときに、家族構成は使えるのではないか。

■ ボランティアの運営
・ お母さん的な存在が出来たことで、一気にボランティア組織ができた例。上から目線ではない、役割はフラット。テンションは同じだけど、経験などが違う人だった。
・ カウンセリングが必要とされたのは「均質な人が集まりやすい」という問題だったのか。性別、年齢層が均質化せずに異質なものが入ってくるといいのか。
・ ボランティア募集の段階で、注意すればいいのではないか。一方で多様に募集すればいいわけではない。ばらばらだと、よそよそしくなってしまう。
・ 上手く配分できる「ボランティアの薬剤師」のような人が必要か(ボランティアバンク、派遣業…)。

■ 内堀の評価〜アート事業と投資
・ アートプロジェクトで外側の評価っぽく見えるんだけど、内側に食いこんでいるものってあるのだろうか。内堀の評価って何か。年末の展覧会ベストは内堀か。
・ アーティスト・イン・レジデンスって内堀に集中したものなのではないか。どんな評価をしているのか。どんな要請のなかで出てくるのか。
・ レジデンスにすると参加者数とかが求められないのではないか。そもそもの目的が投資なのではないか。
・ アートプロジェクトは投資だと思われていない。消費だと思われている。そのため、即時的な効果が求められる。
・ 美術館だと作品購入は投資になる。アートプロジェクトは消費=即評価。
・ 投資的な効果ってどう表現されるのか。現実的には捏造に近くなる。道路は事前評価に地層を組み上げていった(つくるとどうなる、という説明)。
・ こども向けのプログラムがやりやすいのは教育とオーバーラップしやすいから(投資的な効果が分かりやすいから)。効果が曖昧なもののほうが簡単か。
・ アートプロジェクトは社会的なヴィジョンを語れていないのか。アートプロジェクトがどんな財として捉えられているのか、は重要なのでは。

■ アートプロジェクトの歴史
・ 日本最古のアートプロジェクトとは何か。何を最古として考えるのか。
・ 牛窓国際芸術祭(1984年〜1992年)、白州か。
・ 加治屋健司さんの論文 http://www.art.hiroshima-cu.ac.jp/~kajiya/research.html#works
・ 橋本敏子さんの本(『地域の力とアートエネルギー』)を読んで、この15年で何が変わったのだろうか、と考えさせられた。アートプロジェクトは先行例を気にするではなく、走りだして始まった。そして、走り続けた15年だったのではないか。
・ 美術館が増えてきたのと同じ流れなのではないか。仕組みが出来ると次々とできる。90年代はアートプロジェクトが万能薬のように思われていた。

■ 個人まとめ:石崎さんの図
・ 評価を光にたとえてみた。プロジェクトのコア(イノベイティブなもの)を守る傘がある。
・ 紫外線(まちづくりなど)と赤外線(経済効果など)と可視光線。可視光線が届いてほしい。
・ 光が届くのであれば、副産物として教育や地域への効果が出てくる。
・ たまにカウンセリングなど養分を与えるとより芽が育つ。
・ 光はなければならない。けれど、有害な光をいかに遮るのか。光=社会の厳しい視線。
・ いい光だけをイノベイティブなところに到達するようにしたい。成熟した葉であれば、有害なものから守ることができるだろう。
・ ひとつの傘にしなかったのは、説明責任がものすごく発達したときに、どこかの時点で質も高くなってくるのではないだろうか。
・ 評価により質の高まりも認めておく必要があるのではないか。
・ 芽が生まれるか、生まれないかは偶然に左右されることも多い。

■ 評価のコメントの行方
・ 行政から評価のコメントが現場に届かない。
・ 見せたほうが当事者も学ぶところが大きいのではないか。(外から)どう見られているかは分かるのではないか。
・ 評価委員の言葉を匿名で伝えることの意義は何か(部外秘の意味)。

■ 個人まとめ:石田さんの図
・ 外側への説明=社会への説明責任(行政の人が使わなければいけない言葉)
・ 内堀=面白いこと、クリエイティブ、攻めの評価、よりよくしていく評価。
・ 評価者は両方をつないでいく役割がある。
・ 組織として、制度としてどう実現していくのか。たとえばAAFのようなアンブレラ型の方法。
・ 制度自体を組み替えることで、新しい評価のあり方があるのではないか。
・ 新しいファンドをつくることで、助成金の仕組み自体をつくっていく方法。たとえば、情報公開による認証制度を行っている京都地域創造基金の例。

■ 質的な材料の扱い方
・ (質的/量的など図式化することで)質的/定性的なものに対する態度を考えさせられた。対面インタヴューでも、ひたすら感動を引き出そうとしてしまう。
・ 第三者がいいかもしれなけど、なかなか口が重くなる。だから、おじいちゃん的な存在が必要なのか。期間をあけてインタヴューが重要。

■ 今後のこと
・ 今回の個人まとめで上手いこと分担が出来てきたのではないか。
・ アクターの図、攻めの評価のなかみ、キャベツモデル、全体的なスキームという流れが出来てきた。
・ ベースの考え方が共有されてきたので、個々の関心を深めていけた。

■ 次回の進め方:個々のテーマを、もう一段階を深めていく。
・ アートプロジェクトの評価におけるアクター。アクターごとに説明が違う。どう違っているのか。どうあるべきなのか。中心のアクターが違うものを数種類つくったほうが面白いかもしれない。

・ 攻めの評価(カウンセリング・批評・ドラマトゥルク)、で「おじいちゃん役」という言葉は説得力があるのではないか。
・ 評価者の適切な距離のとり方、具体的な人物像。内堀の評価でどのような役割、経験、知識が必要なのか。パーソナリティから普遍化できるといいのではないか(スキルまで?)。

・ 説明する言語のグラデーションと時間性。キャベツモデル:1)ひとつのプロジェクトの成長モデル、2)社会をキャベツとして捉える(芯のプロジェクト、外側のプロジェクトで捉えるモデル)。
・ 新しいプロジェクトが生まれるジェネレーションも考える。
・ イノベーティブなものをどう判断するか。事後的にしかわからないのでは。
・ 図の意味を言語で深めていけるといいのではないか。光はおじいちゃん的な存在が見えてくると分かりやすいのでは。

・ 評価者でつなぐモデル、アンブレラモデル、ファンドレイズするモデル。
・ 具体的なスキームがコアになってくるのではないか。
・ ウェブにファンドレイズにあるものが増えてきているのではないか。

12/14 第6回ゼミの参考資料(事前連絡)

あっという間に今年も残すところあと20日。
以下、年内最後の「第6回評価ゼミ」の事前連絡です。
(ゲスト講師をお招きするゼミも、次回がラストです)

【第6回評価ゼミ】
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■テーマ:「アートプロジェクトの評価:継続・発展・振り返り編」 
■ゲスト講師:インディペンデントキュレーター/
     remo(NPO法人記録と表現とメディアのための組織)理事 雨森信さん
■日時:2010年12月14日(火)19-21時 
     ・19:00~20:30 雨森さんレクチャー
     ・20:30~21:00 質疑・応答、ディスカッション
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
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第6回は、「長期にわたって行われているアートプロジェクト」が
どのように評価されているのかを考える回です。
継続と発展につながる「振り返り」とは?
「振り返り」による継続・発展の基盤づくりとは?

ゲストの雨森さんには、2003年から続く
「ブレーカープロジェクト」を題材にお話いただきます。
今春、大学と共同で「ブレーカープロジェクト」の評価をまとめたそうです。

配布資料は下記です。
・2008年度プロジェクトマップ
・2009年度プロジェクトレポート


長期にわたる活動の評価や振り返りは、
前回ゼミの「アサヒ・アート・フェスティバル」や、
同じく前回セルフリサーチ用に総括報告書を配布した
「大地の芸術祭」などの事例も参考になります。

それらとも比較してみながら、雨森さんのお話をうかがうと、
共通点や相違点が浮き彫りになるかもしれません。
楽しみですね。



【若林】

レポート|第5回「アートプロジェクトの評価:ピア・モニタリング編」

ゼミ生/増崎孝弘


11月16日、第5回の評価ゼミのテーマは「ピア・モニタリング」(ピアとは、同等・同格・同僚・対等者・・・といった意)。今回のゼミのゲスト講師には、アサヒ・アート・フェスティバル(以下、AAF)の事務局長を務める芹沢高志氏を迎え、氏がAAF参加団体のネットワークから相互評価・検証の仕組みをいかにつくり上げてきたのか、その過程における苦労、そして今後の展望など、貴重なお話を伺いました。



現在のAAFは以下の3つのまとまりがが中心となって動いている
① 期間限定の企画の集合体としての「AAF参加プログラム」
② 一度参加した団体を恒常的にネットワーク化し、新規の企画・団体を視察・支援したり、困難を協議したりするような人的交流の場としての「AAFネットワーク」
③ AAF参加プログラムの選定、AAFネットワークのマネージをする機関として、個人の集合としての「AAF実行委員会」


Ⅰ.AAFの歴史と評価の問題への対応

評価の問題が立ち上がるまで
2002年、それまでのアサヒビールのメセナ活動を集約する形で発足したAAFは、翌年にはトップダウン的な総合ディレクター制を廃止し、既存の企画を束ねていくフェスティバル形式へと移行。

それに伴い、全国から実行委員会への参加者が増加、ボトムアップ式で様々な企画が上がる。有限の資源の中で資金の分配・企画の選定などを行う制度的な枠組みの必要性が高まった。

2005年、公募制へ移行。70近い企画が集まり、30ほどを選定。選定された団体の相互交流支援のために設置された「ネットワーク会議」で、地域社会と向き合っている各団体の共通の問題解決に資する相互交流、ピア・モニタリングの重要性が明らかになった。2006年には「評価」という単語への現場の根強いアレルギー反応を踏まえ、「検証」という言葉をAAFとして使っていくことを合意。

検証体制形成の経緯詳細
2004年、AAF2004の参加プログラムのひとつとして、評価を考えるアートマネジメント講座「ひぐれ学校」が開校される。翌年講座の卒業生が実行委員会に入り、AAF2005年の評価を実施した。非専門家集団による評価報告書が完成。

2006年、より専門的な手法による調査へ。NPO法人アートNPOリンクによる検証チームを導入し、統計学などに基づいた新たな評価手法の開発を目指す。しかし、厳密な評価項目の設定に、現場では反発も強まってしまった。

2007年は前年度を踏まえ、現場レベルでは事前事後の自己検証に留め、モニタリングはドキュメントチームを結成し各地を巡回させ、そのレポートを検証委員会(実行委員会と外部専門家で構成)によってチェック。しかしチームのレポートの質にバラツキが課題になる。

2008〜09年は、そのドキュメントにある程度フォーマットを設定、検証委員会が実際にモニタリングして検証の質を統一する方向性へ進み、現在は、「同業者である企画選定者が、自ら選んだ企画を評価する」というピア・モニタリングの構図を重視し、選考委員会(実行委員会から立候補・互選され、そこに外部委員が加入する組織)が検証委員会を兼務する制度で落ち着いている。


Ⅱ.評価のそもそも論

アートプロジェクトを評価することは可能なのか?
元々自身が所属していた環境アセスメントのシンクタンクで、当時の米国での環境影響評価(EIA)という政策決定手法に影響を受けた。しかし異様に細分化された個別の指標における変化測定の技術的精度の高まりの半面、全体計画の意思決定・評価という問題に対して、EIAの問題点も指摘され始めていた。

2006年の検証チームの専門家が現場の混乱に対し言ったことは、「計画なくして評価なし」。目標値を設定し、現状が目標値からどれだけ離れているのかを測定するのが評価であり、計画がない漠然とした状況ではどんな技法を持ってこようが「評価はできない」。

t時間後の変化を予測する・・・といったような直線的な計画の概念は非常に洗練された。しかしそのアンチテーゼとしての「ゆらぎ」、円環的・螺旋的な計画は可能なのだろうか?

システム論者のエリッヒ・ヤンツがインフォメーション・ポテンシャルという概念を残したように、プロジェクトの価値は、次にくる予期しないプロジェクトをどれだけ生み出す潜在能力を持っているか?というアートプロジェクト評価も成り立つ。おそらく既存の直線的評価システムをある程度使いつつ、それ外側にある変化・ゆらぎ・予期せぬものの生成といった項目を新たな手法で評価する、そういったバランスが必要である。しかしその新たな手法に関しては、未だに断定的に言えるような段階にはない、これからの課題である。

AAFにとってのピア・モニタリングの可能性
AAFはアサヒビールという私企業のメセナであり、パブリックなミッションを持っているものの、税金を使ったプロジェクトとは一線を画している。「何かを世の中に問いかける」ことをある種戦略的に打ち出すために、あえて当事者間で選定・投資をしていく、そういった姿勢も許容されうる。もちろんそれは閉鎖的な当事者による「うちわ」の議論ではない。そのプロセスは開かれているし、フェアな過程である。


Ⅲ.質疑

Q.芹沢さんが関わった事例のプロジェクト・ポテンシャルを見る際に、具体的にどの側面に注目すればいい?

A.横浜トリエンナーレでは、トリエンナーレ全体の計画の中では傍流・予期しない展開がきっかけとなって生まれたZAIMやハマコトリといった存在がある。別府では、わくわくアパートメントという偶然性から生まれた企画があり、そこで生まれたネットワークが今では京都などで新たな展開を生み出しつつある。これらは、僕の中でプロジェクトの積極的な評価の対象になる。


Ⅳ.感想

様々なプロジェクトに関わったアートディレクターとしての現場感のみならず、環境アセスメントという、「直線的で洗練された」評価システムの只中に身を置いていた経験から、いかにアートがそういう評価に馴染まないか、そしてオルタナティブはありうるのか、という問題に対し客観的かつ積極的な議論をしてくださる、非常に稀有な方だと感じました。

AAFがたどり着いたピア・モニタリング的検証システムは、「直線的」評価と、「螺旋的」評価の間のバランスをうまく取った、アートプロジェクトのポテンシャルを測る一つの有効な可能性だと思います。しかしそこへの到達には非常に長い期間、多くの人間のコミットが前提となります。また芹沢さんがおっしゃる通り、私企業のメセナだからこそできる部分もあると思います。

純粋な市民活動・企業メセナ・国や自治体の政策、またその混成など、様々なプロジェクトの性質に応じた有効な評価モデルをバランスよく組み合わせていくこと。これからの社会と芸術の関係を判断する上で、AAFの9年にわたる評価問題との格闘の歴史は、そのアプローチに大いに参考になるものだと思いました。

研究会4|議事メモ

第4回TARL評価ゼミ研究会
日時:2010年11月29日(月)19時-
場所:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
内容:
1)前回の議論の振り返り
2)事例報告 東京アートポイント計画の評価
3)ディスカッション


以下は、ディスカッションの話題を中心にまとめています。

■ 事例報告をうけて
・ AAFのようなフラットな関係ではなく、アートポイントは比重があるのでは。「可能性の評価」に近い。全体の配分のなかで、段階や状況が違うプロジェクトが組まれている。価値的なものが入っている感じがする。
・ そういう意味では、ピアメンタリングが難しいのでは。逆にピアメンタリングはみんながフラットだったら、成り立たないのではないか。お姉さんやお兄さん的な立場があったほうがいい。
・ 弟がお姉さんを評価するのは可能なのか。教師と学生の評価がありえるから、どちらでも意味をもちうるだろう。

■ インタヴューの手法
・ アートプロジェクトはアートを評価できるのか、という芹沢さんの投げかけ。たとえばインタヴュー調査をするときでも可能性や展開可能性を引き出したり、次の展開まで踏み込める何かを提示していく必要があるかもしれない。
・ そうすると具体的にどういう方法がありえるのか。インタヴューしていく人が価値化をしていくのか。
・ インタヴューをする人で、出てくる意見が変わってしまう。出てくるエピソードが恣意的になってくる。同じ質問内容でも違ったトーンの回答が出てくる。
・ インタヴュー対象者の選び方や聞き手によって変わってくるのではないか。

■ 結果の提示の仕方
・ 評価をするときに課題や問題点が分かっているから、次のステップを提示できるはず。マイナスな部分の扱いをどうしていくのか。課題があるから「次にどうしようか」という視点が出てくるはず。
・「問題は分かっているが、人が足りない、お金がない」で終わってしまうのではなく「課題だから次どうするか」というものを、どうすれば一緒に見つけていけるのか。
・ 話しを聞くのがいいのか。その先に何かを提示したほうがいいのか。

■ 内堀と外側の調査スタンス
・ 内堀で一緒にやっていくならば、外側の調査をするときに「内側の人です」と言うか「外側の人で内側にフィードバックする」と言うか。
・ 外側は外側、内側は内側でインタヴューも報告書も分けたほうがいいのでは。いいエピソードが出たとしても、ぐぐっと留めて分けていく。実際にやってみると、結局混ざってしまうのではないか。
・ 外に出すインタヴューとして始まっても、公開の確認の時点で公開できなくなってしまうことがある(削除依頼)。
・ 通りいっぺんの話(たとえば商店街が活性化したなど)しか出てこないことがある。でも、逆にそれは外向きにはぴったりなのではないか。わざわざ対面インタヴューなのに、通りいっぺんのストーリーが出てくる!みたいな(そういう話しを集めるにはアンケートがやりやすい)。
・ 現場を見ている雰囲気が重要になってくるのではないか。可能性を見ていくには。

■ 東京アートポイント計画という傘
・ 東京アートポイント計画全員で最後にミーティングをしてはどうか。
・ 東京全部のなかでどんな位置づけ(どんな可能性があって)ということから、東京アートポイント計画を考えていかなければならないのでは。
・ そもそも(共催団体が)他を意識したり、大きな活動のなかでやっているという意識があるのか。
・ 共催企画としてやっているので、ひとつひとつのアイデンティティが強くて、東京アートポイント計画としての傘で考えることはないのか。大きな傘をよりよくしていこうという考えは難しいか。
・ 東京アートポイント計画以外のプロジェクトも含めて、全体のプロジェクトで見ていくのはどうか。
・ プロジェクト全体の枠組みを問うようなやりかたができないか。企業が大きくなるときに明らかな他社をウィルス的なものを組みこむことがある(そういうやりかたがあるのではないか)。
・ その際の呼びかけは東京アートポイント計画なのか、評価をしたい外部の主体なのか。

■ 傘の影響力と設定の仕方
・ 大きな傘のインパクトと魅力はあるが、M&A的な感じもする。小さなプロジェクトが、たくさん生まれてきた状態で、全体として底上げしていくのか、ということを考える状況もあるのではないか。
・ 傘に入れるときの双方の思い込みで路線が修正されてしまうのでは(個人でやってきた面白さがなくなってしまう)。
・ 傘に入れることで、よりに自由にやってもらおうと思ったはずなのに、共通の目標が出来てしまう…。
・ 知らないうちに傘に入っているのがいいのか。傘が目的をもってしまう(たとえば地域活性化)と問題。ガイドブックのようなかたちになってくるのか。るるぶ的な。
・ AAF傘に入ることの変更度は少ないのではないか。傘にあることのインパクトは大きいのでは。AAFのような活動がいっぱいあるんだ、と全体的な盛りあがりを生んでいるのでは。
・ お金的なものではないけど、テンションが上がったとか、周りからの知名度が上がったなど。
・ AAFのグループ企業のブランドのような影響力。とはいえ、それもAAFの恣意的な判断があったから。

■ 他者をいかに巻きこむか
・ 芹沢さんの話しを聞いていて、AAFは開催2年目にディレクター制度をなくしたことは、大きなブレイクスルーだったのではないか。
・ たとえば偶然性の高い手法で選んでしまうとか。いきなり、他者を恣意性を排していれてしまうことの可能性。公募でも選考は恣意的になる。
・ 事業の枠組み自体を問い直すようなやり方ができないか。全然理解しえない人や知らなかった人と、どのように入れていくのか。
・(同じような価値観をもった人々の)ピアメンタリングなやり方、違う価値観をもった人も入ってくる方法。前者は東京アートポイント計画では可能だけど、後者は呼びかけることに「勢力意図」みたいなものが出てしまうだろう。
・ 東京のキャベツモデルを年に1回、書き換える場。大きな勢力としての東京アートポイント計画が見えてくるかも。

■ 次回のこと
・ 議論は出尽くしている。方向性は何となく確認できているのではないか。
・ これまでの意見をまとめていけば、何か見えてくるのではないか。
・ それから、何かアクションを起こすのにも遅くはない。

11/16、第5回ゼミ開催

全8回の評価ゼミ。
いよいよ後半に入った11/16の第5回ゼミは、P3 art and environment エグゼクティブ・ディレクター/アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)事務局長の芹沢高志さんをゲストにお迎えしました。テーマは、「ピア・モニタリング」=同種の活動を行う関係者による相互評価です。


さて、なぜこの評価ゼミで「ピア・モニタリング」を取り上げたかといいますと…。

もう10年近く前になりますが、ロビーコンサートを開催していたある企業のメセナ担当者が、「ベンチマーク、ベンチマーク!」といいながら、スタッフを引き連れて、他社のロビコンを見学していたことがありました。「なるほど、メセナでもベンチマーキング(wikipedia)か、企業らしい」と思ったのですが、同じ頃、「メセナ留学」という、他社のメセナの現場運営に1日参加する試みに強い興味を示す担当者さんもでてきたりしました。メセナ関係の会議のたびに、超ライバル企業同士の担当者らが悩みを真剣に話し合っている様子にも驚きました。メセナ業界では、同種の活動をする人同士が最高の助言者であり、理解者、よき相談相手、時に厳しくも貴重な忠告者なのだということが自分の中でみえてきました。

これを、どうにか企業メセナ担当者が長年悩んできた「評価の仕組み作り」にいかせないかと考えていたところ、「ピア・モニタリング」というものがあることを知りました。メセナの調査でお世話になっていた当時三和総研の太下義之さんも、確か「ピア・レビュー」という言葉で、メセナ評価についてアドバイスをくださったことがありました。 こうした<仲間による評価>は、メセナ含む非営利セクターの活動、特に活動をよりよいものにするための検証手段としては有効ではないだろうかという、直感のようなものがありました。


私自身は今もなかなかこれを仕組み化できずにいるのですが、2003年にアサヒビールのメセナ評価を取材した際に、協働相手であるNPOに「自社のメセナについて」の簡単なアンケートを提出してもらっていることを知りました。今でこそ、企業のCSR活動ではステークホルダーの意見を聞くためにアンケートを取ることは常識の域に入っていますが、当時の特にメセナ活動においては珍しいことでした。「ピア・モニタリング」の一種だと注目していたところ、アサヒビールはその後NPOとのパートナーシップ事業をメセナの主軸に据え、さらに本格的にAAFを展開するようになったので、その「NPOアンケート」も“本格的”になってきました。


プロジェクトをいかに評価し、それをどのように活用していくのか等を考える「ひぐれ学校」 という場をAAFに設けるなど、AAF初期段階から評価について、問題意識がありました。外から見ていると、とにかく愚直に、(いい意味で)しつこいほどに、アートプロジェクトの評価を試行錯誤しているように見えました。評価という言葉をやめて「検証」にしたり(第1回ゼミの付箋ワークショップで評価という言葉について訊ねたのは、AAFでの議論もあったからです)。そして、格闘している評価の中味は、まさに「ピア・モニタリング」といえるものでした。


日々、多くのアートプロジェクトに携わる方と話をしたり、JCDN(ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク)やアートNPOリンクのようなネットワーク型NPOが次々と生まれてきたのを見るにつけ、アート業界も「同種の活動をする人同士が最高の助言者であり、理解者、よき相談相手。時に厳しくも貴重な忠告者」 だと感じます。アートプロジェクトの評価を考えるに当たっては、こうした「同士・同志」の役割も評価プロセスに組み込んでいくといいのではと思い、(自分がうまくメセナで仕組化できず気になっていることもあって)、ゼミのテーマのひとつに設定しました。もちろん講師は、「AAF評価格闘の歴史」を語っていただける芹沢さんに、と思ったのでした。 なぜそこまで、そして何を話し合ってきたのか、本ゼミとしてうかがえたらと思いました。


芹沢さんのレクチャーの内容は、ゼミ生のレポートに譲りますが、印象的だった芹沢さんからの投げかけを1つ。 「仲間が行う評価の難しさもある。当事者の、当事者による、当事者のための評価も重要」――なるほどです。 ピア・モニタリングを考えるにあたって、「当事者」というキーワードもいただきました。


芹沢さん、お忙しい中ありがとうございました!
終了後は、近くの中華やさんで芹沢さんと楽しく交流しました。


【第5回評価ゼミ】
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■日時:2010年11月16日(火)19-21時
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■講師:芹沢高志さん(P3 art and environment エグゼクティブ・ディレクター/AAF事務局長)
■内容:「アートプロジェクトの評価:ピア・モニタリング編」
関係者が相互に活動を検証しあう評価方法について、事例に基づいて学ぶ。 
    ・19:00~20:40 芹沢さんレクチャー
    ・20:40~21:00 質疑・応答、ディスカッション
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※ピア【peer】…同等、同格の人、対等者、仲間、同僚、同級生、クラスメート、友人、同輩、同業者

■講師プロフィール
芹沢高志 (せりざわ たかし) 
P3 art and environment エグゼクティブ・ディレクター/AAF事務局長 

1951年東京生まれ。神戸大学数学科、横浜国立大学建築学科を卒業後、(株)リジオナル・プランニング・チームで生態学的土地利用計画の研究に従事。その後、東京・四谷の禅寺、東長寺の新伽藍建設計画に参加したことから、89年にP3 art and environment (http://www.p3.org/) を開設。99年までは東長寺境内地下の講堂をベースに、その後は場所を特定せずに、さまざまなアート、環境関係のプロジェクトを展開している。
帯広競馬場で開かれたとかち国際現代アート展『デメーテル』の総合ディレクター(2002年)、アサヒ・アート・フェスティバル事務局長(2002年~)、横浜トリエンナーレ2005キュレーター、別府現代芸術フェスティバル2009『混浴温泉世界』総合ディレクター。慶応大学理工学部非常勤講師(2001年~2006年、建築論)。著書に『この惑星を遊動する』(岩波書店)、『月面からの眺め』(毎日新聞社)、訳書にバックミンスター・フラー『宇宙船地球号操縦マニュアル』(ちくま学芸文庫)、エリッヒ・ヤンツ『自己組織化する宇宙』(工作舎、内田美恵との共訳)など。


■配布資料
・レジュメ「アートプロジェクトの評価:ピア・モニタリング編」(芹沢高志)
・「アサヒ・アート・フェスティバル2005 評価報告書」
・AAF検証シート
・アサヒ・アート・フェスティバル2010 リーフレット
・アサヒ・アート・フェスティバル2010 報告会(11/20-21)案内


■参考情報
・「アサヒ・アート・フェスティバル2010」 http://www.asahi-artfes.net/  


【若林】

11/16第5回ゼミの参考資料(事前連絡)

初期のゼミ写真をみると、皆さん半袖姿。
あれから夏が過ぎ、秋も深まりゆき、いよいよゼミも後半戦です。

以下、第5回評価ゼミの事前連絡です。
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■日時:2010年11月16日(火)19-21時
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■講師:P3 art and environment エグゼクティブ・ディレクター/AAF事務局長 芹沢高志さん
■内容:「アートプロジェクトの評価:ピア・モニタリング編」
関係者が相互に活動を検証しあう評価方法について、事例に基づいて学びます。 
    ・19:00~20:30 芹沢さんレクチャー
    ・20:30~21:00 質疑・応答、ディスカッション
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大枠のテーマは、ピアモニタリング=同種の活動を行う関係者の相互評価ですが、AAF(アサヒ・アート・フェスティバル)の検証事業をひとつの事例に、評価についてさまざまな角度からお話いただく予定です。
 ・AAFの紹介
 ・AAFにおける評価導入の変遷
 ・AAFの現状における評価手法
 ・評価について(一般論)
 ・予測/計画/目標/評価といった概念について、線形予測とアートとの関係性
  (従来型の評価がいかにアートプロジェクトには有効でないか) 他

★参考情報
・「アサヒ・アート・フェスティバル2010」 http://www.asahi-artfes.net/ 

★当日配布資料
・芹沢さんレジュメ
・「AAF2005 評価報告書」
アサヒ・アート・フェスティバル2010 リーフレット
アサヒ・アート・フェスティバル2010 報告会(11/20-21)案内





















※ セルフリサーチ用資料は、以下を配布します。
・「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」総括報告書(本編・資料編)



【若林】

文化庁「文化政策部会」で議論している「評価」のこと

第4回ゼミの柴沼さんのお話を受け、行政、特に文化庁の評価について、もう少し共有しておきたいと思います。 文化庁に対して政策提言する方、文化庁から助成金を得ている/これから申請しようとしている団体、今後パブリックコメントを出そうと思っている方などには、おおいに関係ある話です。

                  *        *       *

9/29に開催された文化庁の「文化審議会 第8期 第11回文化政策部会」 の議題の一つは、「政策目的・達成目標の在り方について」。 配布資料が公開されています。

○資料4-1: 文部科学省(文化庁)における文化行政の政策評価(実績評価)体系(PDF:116KB)
○資料4-2: 文部科学省における事業評価(平成23年度対象事業の例)(抜粋)(PDF:284KB)
○資料5: 文化政策の評価について【吉本委員提出資料】 (PDF:152KB)


来年度の文化庁予算の概算要求には、「日本版アーツカウンシルの試行的運用」が掲げられており、PDCAサイクルを回す、つまり「評価」を行うことが明記されています。
どのような評価方法が効果的か、文化政策部会で今後も議論されていくのでしょうか。本ゼミとしてもフォローしていきたいと思います。

上記配布資料の「5番」、ニッセイ基礎研究所の吉本光宏さんがレクチャーされた際の資料は、大変参考になります!ぜひご一読を。



【若林】

行政の政策評価~文化庁の評価の現状

第4回評価ゼミで、講師の柴沼雄一朗さん(総務省行政評価局)から、文化庁の事業についても相当なボリュームがある細かな評価結果がまとめられている、調べれば確認可能とのお話がありました。
何がどのように評価されているのでしょうか?その手法は? 文科省や文化庁の行政評価の現状は、しっかりフォローしておきたいところ。 下記に、いくつか事例をまとめます。

■文部科学省の実施する政策評価 (文科省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/index.htm 
文科省の政策評価の方針(柴沼さんのお話にあった国の方針に沿った内容)や、「実績評価書」(H13年~)、「事業評価書(新規・継続事業)」(H14年度~)、「規制に関する評価書」(H16年~)、「総合評価書」などが公開されています。独立行政法人評価の結果も掲載(これは以下で別途説明)。

例えば…昨年度(2009年)新規事業として始まった「アートマネジメント重点支援事業」がどのような展望のもと、どのように事前評価され、公表されていたか、みてみましょう。

⇒「文部科学省事業評価書―平成21年度新規・拡充等―」 の中で、「平成21年度 文部科学省新規・拡充事業 」の「政策目標12 文化による心豊かな社会の実現」という枠の中で、新規事業として事前評価されています→ 「97.アートマネジメント重点支援事業(新規)【達成目標12-1-2】」

点検項目は、下記の通り。
◎事業の概要等
 1.事業目的
 2.事業に至る経緯・今までの実績
 3.事業概要
 4.指標と目標 ([指標] [目標] [効果の把握方法])
◎事業の事前評価結果
 A.19年度実績評価結果との関係
 B.必要性の観点
   1.事業の必要性
   2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)
   3.関連施策との関係 (①主な関連施策 施策目標12−1 、②関連施策との関係)
   4.関係する施政方針演説、審議会の答申等
 C.有効性の観点
   1.目標の達成見込み
   2.上位目標のために必要な効果が得られるか
 D.効率性の観点
   1.インプット
   2.アウトプット
   3.事業スキームの効率性
   4.代替手段との比較
 E.公平性の観点
 F.優先性の観点
 G.総括評価と反映方針
◎指摘事項と対応方針 (【指摘事項】 【指摘に対する対応方針】 )

※気になるのは、冒頭に「事業開始年度:平成21年度、事業達成年度:平成25年度」とありますが、この新規事業、1年で終わってしまったんですよね…。せっかく評価方針や目標達成度の評価指標を定めても、事業がたった1年でなくなってしまったら、事前評価の時間や労力がもったいない。 ところで、このように「事業をやめると決める/決めた時の評価」については公表されていないようです。


■文部科学省 行政事業レビュー(文科省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kouritsu/detail/1293397.htm 
予算の支出先や使途の実態を把握し、改善の余地がないか事後点検を行う「行政事業レビュー」を、文科省も実施。レビュー対象事業の事後点検内容=「レビューシート」を公表しています。
次年度概算要求への点検結果の反映状況も公表。


■文化庁レビューシート (文科省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kouritsu/detail/1295386.htm 
レビュー対象事業の「レビューシート」を個別に公開。 点検項目は次の通り:
1)予算事業名
2)事業開始年度
3)レビュー作成責任者
4)担当部長局
5)担当課室
6)会計区分
7)上位政策
8)根拠法令(具体的条項)
9)関係する計画、通知等
10)事業の目的(目指す姿)
11)事業概要
12)実施状況
13)予算の状況
14)自己点検:支出先・使途の把握水準・状況/見直しの余地
15)予算監視・効率化チームの所見
16)補記
17)資金の流れ(資金の受け取 り先が何を行っているかについて補足)
18)費目・使途(「資金の流れ」においてブロックごとに最大の金額が支出されている者について記載。使途と費目の双方で実情が分かるように記載)
19)「複数支出先ブロック」の支出先一覧(上位10機関)

ちなみに、レビュー対象となっている事業には、以下のようなものがあります(一部抜粋)。
0453 メディア芸術振興総合プログラム
0455 新進芸術家の養成・発表への支援
0456 芸術団体等が行う養成・発表機会の充実
0459 「文化芸術による創造のまち」支援事業
0460 地域人材の活用による文化活動支援事業
0461 地域文化活動活性化推進事業
0465 日本芸術院会員年金の支給等に必要な経費
0466 独立行政法人国立美術館運営費交付金に必要な経費
0469 独立行政法人日本芸術文化振興会施設整備に必要な経費
0470 文化財の維持管理等の推進
0471 文化財保護対策の検討等
0472 美術館・博物館活動の充実
0473 鑑賞・体験機会等充実のための事業推進
0491 文化政策企画立案
0492 文化ボランティア活動推進事業
0493 文化政策情報システムの整備


■独立行政法人の評価
http://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/d_kekka/main10_a11.htm 
各年度毎に、業務実績に係る評価が夏ごろ発表される(例:「平成21年度に係る業務の実績に関する評価及び中期目標に係る業務の実績に関する評価について」) 。
実際の評価結果は、法人ごとにまとめられています。文科省関係(文化系)の独法「日本芸術文化振興会」の評価も公表されています。
⇒「独立行政法人日本芸術文化振興会の平成21年度に係る業務の実績に関する評価」(PDF:1499KB) 。

※全部で86ページと膨大。これは事前の指標設定にも、評価そのものにも相当な労力がかかります。たとえ一般に公表されても、読むのだけで一苦労。行政が事業評価結果を公表することの最大の効果のひとつ=「議論の喚起」には繋がりにくいように思えます。

【最後に番外編】
■事業仕分け結果・国民から寄せられた意見と今後の取組方針について
行政刷新会議の事業仕分けの対象となった文科省の事業についてパブコメを募集。その結果を受けて発表した今後の取り組み方針。


【若林】

レポート|第4回「行政の政策評価」

ゼミ生/小林寛斉

Ⅰ.柴沼さんのお話の内容

第4回の評価ゼミでは総務省行政評価局の柴沼雄一朗さんを講師に迎えました。 これまでの二人の講師はアート関連業界からでしたが、今回は現役国家公務員で、かつご所属もアートとは距離の遠い部署。アートに関するゼミにおいては異色の講師が、普段あまり馴染みのない国の政策評価制度について親切、丁寧に説明してくださいました。





1.行政評価制度導入の背景
かつて行政組織の最優先事項は、①新しい法律を作る、②新しい予算を通すことの二点であった。しかし、①法律を成立させることまでが関心事で、どう執行されるかが省みられない、②(国であれば)財務省主計局に説明して予算を通すが、実際にどう使われたかの検証が乏しい、などの批判を受けることになった。90年代、厳しい財政状況や右肩上がりの成長を前提としたそれまでのシステムが限界を迎え、行政にも効率が求められるようになった。そこで、三重県を皮切りに自治体でまず評価制度が取り入れられた。国に導入されたのは、橋本行革の時である。


2.政策評価制度の特徴
各省庁による自己評価が基本である。その理由は、①作った法律、とった予算についてきちんと省みるようにするため、②情報を網羅的に把握しているため、重要な情報が出やすいため、である。自己評価では各省庁の「お手盛り」になってしまうのではないかという批判がある。その批判に対しては次の三つの対策が取られている。①客観的になるような基準を設ける(例;数値目標)、②第三者の目を入れる(例;有識者の評価)、③プロセスを透明化する(例;ダム建設にあたっての根拠の試算方法などを公表する)。


3.政策評価の方式
評価方式は三種類ある。①事業評価、②実績評価、③総合評価。事業評価は細かい単位、実績評価・総合評価は大きな括りでそれぞれ評価する。目標はスローガン的なものではなく、具体的に定めることが重要である。「いつまでに」 といった期限も設ける。


4.今後の課題
柴沼さんの個人的な所感。より良い評価をするための今後の課題。

自己評価と第三者評価のバランス
自己評価は網羅的に情報を把握している主体が評価するという利点がある一方、不利な情報が出づらいという欠点がある。他方、第三者評価ではある程度の客観性は確保できる利点があるが、情報を網羅的に把握するのが困難で、部分的な面で評価することになるという欠点がある。

予算との関連
予算には限度額という一定の制約がある中(相対的)、評価の客観性(絶対的)をどのように確保、反映するのか。

ミクロなレベルの評価とマクロなレベルの評価
ミクロなレベルの評価は数字など客観化しやすく予算と結びつけやすい。しかし、マクロなレベルの評価であると、戦略など政策論争的な抽象的な議論になりがちであり難しい。


5.質疑応答
※一問一答ではなく、柴沼さんが答えた内容をいくつかの項にまとめました。

評価制度の狙い
今までの行政は一度決めたことを中止することは困難であった。しかし、 評価制度があることで、事後検証をする材料を提供する。 それによって行政も事業の見直しや方向転換ができるようになった。

事業仕分けについて
事業仕分けでは少ない資料で分かりやすい説明が求められる。「一般人の理解の範囲内」で議論をする。「専門性」を背景にして材料を積み上げている行政評価局からすると、かなり対極な世界である。陥りがちなのは全体像から一部だけを切り取って判断しがちなことだが、一般人の感覚で大胆に結論を下すことは、それはそれで一つの評価である。行政にショックを与える仕組みとして機能しており、また事業自体に関心を集めるという点でも成功していると思う。

アートを評価するにあたって
何を評価するにしても出発点は目標を設定すること。目標を具体化していかなければ評価できない。価値観と価値観の評価はできない。アートを評価するに当たっても目標を具体化する必要がある。例えばリサイクルをテーマにした芸術活動をした場合。芸術では二流三流でも、ものすごくテーマ性があって、来た者全員がその活動に強い印象を受けて帰ったとする。その場合、仮にリサイクルの普及という点で判断すれば良い評価になる。一方、芸術性で判断したらまた違う評価になる。

評価のコストについて
評価自体にコストがかかる。公共事業の評価であれば、研究会を開き、何回も議論し、評価する際の指標を決めて計算をする。非常に手間暇がかかる。そこでコストに見合うような合理的な評価について考える必要がある。実際には、たくさんの評価対象がある中でターゲットを絞り重点的に取り組んでいる。そのようにして深く掘り下げていかないとなかなか問題点が見えてこないこともある。





Ⅱ.感想

柴沼さんがしきりに「議論」という言葉を使っていらっしゃったのが印象に残りました。「議論」を始めるためにはある程度客観的な指標やルールの共有が必要です。そうでなければ、水掛け論に陥りがちだからです。柴沼さんによれば「価値観と価値観の議論はできない」となります。価値観ではなく、同じ土俵で議論をしなければなりません。
 「事業仕分け」も一つの議論の場です。事業仕分けに対して柴沼さんは 「評価方法のひとつであり、今までにない発想でインスピレーションを得ている」とおっしゃってました。これは意外でした。事業仕分けは各省庁側の人間には厳しいものと思っていたからです。それと同時に柴沼さんの発言には一貫性があるとも思いました。柴沼さんは繰り返し、「議論をするために目的、目標を具体化する必要がある」とおっしゃっていました。事業仕分けの目的は「一般人の常識で行政のムダをなくす」というものです。その目的の是非で争わず、その価値観を受け入れた上で議論に挑む柴沼さんには、評価制度に携わる者としての気概と可能性を感じました。
 事業仕分けも専門的観点の判断の欠如という弱点があるように、万能な評価手法というのは存在しません。それぞれの評価手法のメリット、デメリットを把握し、議論を深めていくことが大切だと思いました。

研究会3|議事メモ

第3回TARL評価ゼミ研究会
日時:2010年11月1日(月)19時-
場所:小金井アートスポット シャトー2F
内容:
1)前回の議論の振り返り
2)事例報告 静岡県立美術館の評価
3)ディスカッション


以下は、ディスカッションの話題を中心にまとめています。

■ 事例報告を聞いて
・ どこまで、誰が評価の作業をするのか。投入できる資源と目標を設定しないと「ないものねだりのスパイラル」に陥るのではないか。再現のない天井を追い求めるようになる。
・ 「具体的に記述しろ」という発言(じゃあ、どこまで具体化すればいいのか)。
・ 誰か評価の材料を調査し、まとめているのか(学芸員では展覧会の仕事との兼ね合いが難しくなるのではないか)。
・ 客観的に自分を見つめ直すこと(日記を書くような)で意識改革(意識化)をできるのではないか。
・ あまり重箱の隅をつつくようなことばかりしていても、現場には届かなくなってしまう。ある種の緊張感をもったものにしなければ意味がない。

■ アートプロジェクトと美術館
・ たとえば美術館のアクセスが問題にあがったときにどのように考えるか(ハード面はどうにもならない問題なのでは)。
・ アートプロジェクトは地域との関係が評価軸にあがる。そこでの関係をつくりすぎて膠着することの問い直しを誰が、どのように検証できるか。

■ 評価の視点
・ 定性/定量と量的/質的という視点がある。学芸員のコメントは定性的だが、(評価の)考え方は量的なのではないか。数値の代わりに言葉なのだけれど、根本的な考え方は物語的ではない(処理が数的になってしまう)。
・ 年度ごとの目標で活動の歴史とあわせて変化されていくのはどうか(⇔ずっと共通の評価軸)。評価対象の活動段階にあわせたもの。

■ 評価と制度
・ ポジティブな評価とは何か。感覚的にでも展覧会が面白くなっているかが大事になってくるのではないか。評価に意味はあるが、想定の範囲内は越えないのではないか。
・ 評価では「制度」を考えなければならないのではないか。美術館のオルタナティブとしてのアートプロジェクトが出てきたとしたら、既存の制度の枠組みで捉えることはできないのではないか(「アートプロジェクトと評価」は、もともと矛盾をはらんでいる問題設定なのではないか)。
・ 近年の評価圧力はアートプロジェクトが「制度」の枠内に収められていくような流れなのではないか。
・ 評価の定義を「制度内の評価」とするのか、「制度未満まで評価」(自由で不確実なもの)とすることができるのか。後者へ対応することができるのか。
・ たとえば制度と評価が対応しているとすれば、評価は制度内のもの、未来のものは内部のマーケティングとしてしまうこともできる。「評価」という言葉は相応しくないのではないか。
・ 制度を前提としない「評価」では、そもそも評価を求められていないのではないか。

■ 評価の「外堀」と「内堀」
・ アートプロジェクトは行政主導が多い。そうすると目的とする地域づくりの評価になりがち(そもそも評価はそうなのではないか)。アーティストの自由な活動が目的ではない。
・ 運営側やアーティストの本当にやりたいことは何なのかを評価という言葉ですくいあげることができたら。アーティストの活動を評価するのか。批評と評価はどうするのか。
・ 漠然と違う方法があるのではないかと思っているが、別の方法が具体的には見えてこない。
・ 本当に新しい手法が出てきたときに、まずわれわれがどのように対峙できるのか。
・ 評価できないゾーンを報告しないゾーンにいれてしまうか、徹底的に記述してしまうか。
・ 大きな変化が見えてきたら(見える状態にパッケージ化されたならば)外に出すようにする。
・ (がっちり見えるようにして説明を行なう)外堀と(内側の判断で公開を制御する)内堀があるのではないか。内堀をつくらなければ実験的なアーティストの活動を後押しできない。
・ 成長を後押しする評価は外に公開する必要はないかもしれない。内部的に説明できる評価は「2、3人しか来ていないが、重要なこと」を説明できるかどうか。
・ 外堀で社会性をもたせつつと内堀もしっかりやり、両面をあわせて、社会的に認められるようなものを提示していく必要がある。
・ 内堀は批評の問題とクロスオーバーしてくる。内堀から外堀へ向かっていくようなキャベツのようなモデル。保育器から出た瞬間に面白くなくなるかもしれないけど、次を育てる外の壁になってくれる。
・ プロジェクトが外へ説明する上手さをもつだけでなく、自分たちが面白いことをやっているかどうかの「批評性」をもちつづけられるかどうか。
・ どんなものでも時間が経つと外側に追いやられていくのではないか。常に若い芽が出続ける準備しかできないのではないか。
・ プロジェクトとして仕組むときに若い芽を組み込んでいくことを意識的に進めていかなければならない。
・ これからはここで議論してきた言葉を細かく検証して積み上げていくことが必要になってくるのではないか。
・ 具体的な例に即して検証してみたい。たとえば当事者に「なぜこれが批評性があるのか」と丁寧に聞いてみたい。でも「言葉にならない」「分からないからやっているんだ」ということになってしまうのではないか。
・ 作家はそれでいいが、意欲的なアートプロジェクトを行っている人もそうなってしまう。言葉にできたときのつまらなさ。言葉になったときに外側になってしまっている、とも考えられる。
・ レイヤーが沢山あって、コアな言葉にならないところがあり、一番外側に誰にでも説明できるような言葉がある。キャベツのコアを生み出すような循環性、自己生成性。
・ 評価には説明責任だけでなく、汎用性もあったが、おそらくコアな部分は他には活かしようがないところ。そこを取り出してどうなるのか。
・ 取り出して「これが価値があるんだ」といってもらえることで、それを価値と言っていいんだと言えるようになる。
・ コアなところを取り出すことは「そうやればいいんだ」ではなく、次のアイディアを刺激するようなもの。汎用性のあるモチベーション、起動するスイッチとして取り出す(使えるツールではなく)。道具ではなく、態度。
・ 「こういうものもあるんだ」と実験的な空気が飛び火していく。それがなければくじけてしまう人を救うようなものになっていくだろう。

■ 現行のプロジェクトの評価(テラトテラを事例に)
・ 目標の達成の精度を厳密に吟味していく、目標を疑うことをやってみてはどうか。
・ でも、ざっくりした目標だから走れているところがあるのではないか。その辺を精緻化していくことで走れなくなってしまう。全部を決めてしまうと、それしかできなくなる危険性がある。
・ この規模でのプロジェクトには評価は必要ないのではないか。プロジェクトとしてまわっていく機能としての評価が必要なのではないか、という前提がテラトテラの評価にはある。

■ アートプロジェクトとマネジメント
・ すべてのアートプロジェクトの問題は、「アート」以前の問題なのではないか。
・ そっちに引っ張られて「アート」がおざなりになる問題があるのではないか。アート的に面白くない、は、そっちにひっぱられてしまうため。でも、いままでのアートプロジェクトは、そこを評価してきたのではないか。
・ でも、「アート」以前という枠組みを設定するようなモデルを考えてもいいかは分からない。
・ 「アート」以前で四苦八苦していることが常識化しているアートプロジェクトの状態で、そこを指摘してはどうなのだろうか。
・ アートプロジェクトにおいてアートは赤ん坊のようだ。常に慣れない。
・ 開き直りが通じなくなってきているのが、今の状態なのではないか。 このままでは同じ問題を指摘して終わってしまうのではないか。
・ マネジメントの問題を指摘してもしょうがない。コンサル的なことをしてくのではないか。
・ 問題を話す場所を提供する。家族カウンセリングと似ている。第3者がいると話ができること。

■ 批評/評価/カウンセリング
・ アートプロジェクトの評価的なものはカウンセリング、コンサル的なものなのではないか。
・ 常に流動的な組織状態で動かなければならないため、カウンセリング機能が必要なのではないか。でも、かならず崩壊するわけではない。
・ サポーターなど入ったばっかりの人が意見を言うことができる。長く活動している人が発言しやすくなってしまう。
・ 面白さを安心して追求していける状況をつくることができるか。
・ 外堀的に説明できるものがあり、カウンセリングが機能すればいいのか。
・ 全部外堀にしようとするからつまらなくなるということは(研究会で)共有できた。

■ アートプロジェクトの評価者とは
・ 内堀の面白さを分かりつつ、外堀をやるポジションが必要なのではないか。
・ アートプロジェクトの相談役=カウンセラー?が派遣されていく組織。
・ カウンセラーの役割は何かをアドバイスするのではなく「問題を聞くこと」か。
・ でも、やった場合とやらなかった場合の比較ができない(一般的なカウンセリングでの治ったとは= 日常生活に紛れ込ませることができるレベルまで→ぎりぎりアートって言えるレベル?)
・ プロジェクトを評価するということでは、人とのカウンセリングを行なうことで達成できるのか。
・ 組織が続いていくために評価すること、社会的な意義を説明していくことは違って考えていく必要。
・ ドラマトゥルク=一緒に作品をつくっていく側に入っていく職。
 http://sampleb.exblog.jp/12392452/
 http://www.nettam.jp/blog/2010/06/post-41/
・ たとえば「プロジェクト・ドラマトゥルク」がいることで成立することがあるのではないか。
・ 作品をつくるほうと説明するほうが共有するものがない状況で、分離し、対立してしまう状況があるのではないか。
・ 内堀を共有しながら、あえて外堀へやる人や、内堀を深めていく人とひとりでできないところを分けてしまうのがいいのではないか。
・ 最初にやった人はひとりで内堀と外堀を身体的にやっていた。その重要性が示されたなかで、それをモデルや方法としてやろうとしたことは難しい。
・ カウンセラーよりも深く作品に入っていく方向なのではないか。
・ 内と外をつなぐ人がいないと、内で戦い切れないということがあるのではないか。
・ 意図的に2つの役割を分けて推進していくことが必要なのか。
・ 完全に分けていくモデルは必須ではないが、必要とされているのではないか。
・ ドラマトゥルクってどうすれば育成できるのか。文芸プロフェッショナルか。
・ もし、組織論的なことなのであれば、「安上がりな組織コンサルがいない」ということが問題なのか。
・ ドラマトゥルクは目新しくないと感じるのは、展覧会ならばメインとサブのキュレーターがあるから。
・ でも、メインとサブではないか。別府のプロデューサーとディレクターの在り方はどうか。
・ 評価は第3者ではなく「社会とつなぐ役割」というのは新しい視点かもしれない。
・ 行政でやると固い評価になってしまうことが問題なのではないか。
・ いまの日本では行政との間を上手く渡っていく人が大事になるのではないか。民間では比較的小さな活動も見ていてくれる。
・ 行政では、対個人でやりにくいのかも。けっきょく個人的な関係をつくっておくことが大事になるのではないか。民間ではそれが見えやすいのかも。
・ 小規模と大規模でやり方は変えたほうがいいのかもしれない。

■ 評価の傘
・ 片山さん、プログラム評価の話しをしていたけれど、東京アートポイント計画はそれでいける。テラトテラの評価を個別でしなくともいいのではないか。その点、AAFは上手い。
・ 小さいプロジェクトは、いくつかのプロジェクトをまとめて、おおまとめで評価をしていくのはどうか(日本中がアートポイントで)。数が集まれば、数値として力をもつ。
・ 勝手に想定してやることは可能なのか。アートポイントやAAFという傘以外に、どんな傘を設定すればいいのか。エリア、地域で区切るか。
・ 大きな傘をどのように設定するのか。たとえば日本全体でどんな成果があって、どんな社会的なインパクトにあったなど。
・ 組合ができてしまうと、そこの利益を守ることになってしまう。少なくともアートプロジェクトが増えすぎだよね、とは言えなくなる。
・ 組織化を嫌がるのではないか。デメリットがあるのではないか。
・ アートNPOフォーラムに自分たちで寄付の基金をつくった団体があった。評価を自分たちの手に取り戻すようでよかった。制度と評価がくっついているのであれば、制度を変えていくほうに動いた。
・ みんなが行政に説明をしていくよりは、対象が多様化していいと思う。
・ 傘をつくることのメリットとは何になるのか。「面白さ」を代わりに言ってくれる人になるのか。ロビー活動はしやすくなるのではないか。
・ AAFの検証会もピア・カウンセリングに近くなるのではないか。とにかく、言いたいのではないか。
・ 傘も圧力団体ではなくて、病院のようになってしまうか。アートプロジェクトの病院。駆け込み寺。
・ 公開カウンセリングや定期健診を行なうのかどうか。

■ アートプロジェクトとカウンセリング
・ アートプロジェクトのカウンセリングの専門性とは何か。
・ 話したいだけなのか、何かを言ってほしいのか。「あなただけのプロジェクトの問題じゃない」と言うことの意義。他のプロジェクトがよく見えるらしい。
・ AAFは公開ピア・カウンセリングになっているのではないか。アートポイントの公開ピア・カウンセリングをすればいいのではないか。
・ 「みんな同じ問題を抱えている」という問題を共有する議論だけでは、次のステップで何をするのか、は見えてこない。
・ 予想外の状況が面白いけれど、予想外の状況でしかないのは大変。ベースがあったうえで、予想外の状況が生まれてくるのはいいのだけど。
・ イノベーションが生まれる前提が共有される前に、駄目になってしまう。

「文化庁文化芸術創造都市モデル事業」、神戸地域は「評価ツアー」開催

第1回ゼミで平成22年度文化庁文化芸術創造都市モデル事業の話をしました(リンク集にも掲載)。評価を行うことも採択の条件になっているという、文化庁助成の中では珍しい事業です。
モデル事業に採択された案件のうち、神戸地域では「事業評価ツアーin Kobe」を開催しているとのこと。以下、メーリングリストに投稿された情報を、参考までに転記します。

参加者を募って、プロジェクト内容を丁寧に説明し、「事業評価ツアー」という仕立てにしていくのはなかなかユニーク。どのような内容になるのか、知りたいですね。
他のモデル事業地域はどのような評価を行っているのでしょうか。それも知りたいです。


【以下、転記】
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Subject: [cpnet-info][03162] 文化芸術創造都市モデル事業評価ツアーin Kobe のご案内
神戸大の藤野です。
お世話になっております。
文化庁文化芸術創造都市モデル事業の第三回評価ツアーを行います。
アートの魅力満載ですので、ぜひお越しください。
*********

第3回神戸創庫おもしろくし隊 参加募集!
みなとまち神戸の近代化の歴史を物語る「旧神戸生糸検査所」は、「デザイン都市・神戸」のシンボルとなる‘創造と交流’の拠点として「(仮称)デザイン・クリエイティブセンターKOBE」に生まれ変わる予定です。現在、多様な提供事業が行われるなか、本年度文化芸術創造都市モデル事業に採択され、新たな事業を展開しています。今後、旧神戸生糸検査所(神戸創庫)がより創造的な場となるために、ご意見、ご提案をいただく、第3回評価観考「神戸創庫おもしろくし隊」の参加者を募集します。今回の評価事業は神戸デザインの日記念事業「神戸+デザイン」です。みなさんの新しい視点と愛情ある評価で、神戸創庫とデザインによる地域創造の新たな可能性を発見してください!
日時 10月17日(日)14:30~16:30(予定)
スケジュール 14:30     旧神戸生糸検査所 入口集合 このちらしを持ってお待ちしています
14:30~15:00 神戸創庫おもしろくし隊の説明、提供事業の紹介
15:00~   「神戸+デザイン」事業 視察・評価@カフェ

神戸+デザイン=?
2008年10月16日に、神戸市はユネスコより「デザイン都市」としての認定を受けました。この記念すべき日を「KOBEデザインの日」として、毎年、記念イベントを実施しています。今年のテーマは、「デザインが地域社会でできること」です! 詳細はhttp://kobeplusdesign.jp にアクセスしてくださいね。
□デザインにふれよう
■世界を変えるデザイン展in KOBE・・さまざまな課題を解決してきたプロダクトやプロジェクトの紹介
◆アワード受賞作品展・・ユネスコ・デザイン都市共同CODE ポスターデザインコンペティション優秀作品展など
■「Exit to Safety-デザインにできること」展・・デザインの視点から安全の出口を探す展覧会
□デザインで遊ぼう
■ソーシャル”かえっこ”ビレッジ・・楽しいおもちゃの交換会!15:30からオークションもあります
□デザインを考えよう
■GLOCAL NEIGHBORHOOD MEETING in KOBE・・八潮まちなみづくり100年運動・プロジェクト展2010

当日、旧神戸生糸検査所ではたくさんの提供事業も行われています。お時間のあるかぎり見学していただき、印象に残った提供事業も自由にコメントして下さいね!
◆陶芸家 佐藤千重 展覧会 [新館4階]
◆江里口暁子 写真展 [新館1階北玄関]
◆nami kanrei with candle therapy・・ロウソク作りワークショップ[新館4階]

問合せ先:神戸市企画調整局デザイン都市推進室(担当:松添) TEL 078-322-6573  E-mail koji_matsuzoe@office.city.kobe.lg.jp
主催:CPS thru Arts 実行委員会[NPO法人DANCE BOX・神戸大学・神戸市ほか]

10/12、第4回ゼミ開催

だいぶ秋らしくなってきた10月12日、第4回目の評価ゼミを開催しました。
ゲスト講師は、総務省行政評価局の柴沼雄一朗さんです。

























今回柴沼さんに講師をお願いしたきっかけは、昨年企業メセナ協議会で海外の講師を招いた評価ワークショップを開催した際、ある参加者の方に、「海外の事例を知るのも大事だけれど、日本でも国が丁寧に評価の研究とシステムづくりを行っていますよ。調べてみたらいかがですか」と教えていただいたことにさかのぼります。

調べてみると確かに、日本の政府も想像していた以上に、評価の決まりごとや方針を詳細に設けていることが見えてきました。その担当部局が、柴沼さんご所属の総務省行政評価局。
国立美術館や国際交流基金などアート関係の機関も多数ある「独立行政法人」の評価を行っているのもこちらだとわかりました。
国は、どのように事業を評価しているのか?どのようなガイドラインを設けて政策の評価をすすめているのか?――事業仕分けの記憶もまだ新しいなか、「アートプロジェクトの評価」を考えるにあたっては、国の評価の取り組みの概要を把握しておくことも必要ではないかと思いいたりました。そこで、まったくコンタクトもなかったのですが総務省行政評価局にレクチャーをお願いしたところ、講師をご快諾くださいました。

柴沼さんは、「アートプロジェクトの評価に直接、すぐに役立つわけではないかもしれませんが、話の中から何か参考になる点を見つけていただけたらと思います」と、レクチャーを始められました。
本ゼミとしても、アート以外の領域での取り組みから、あらゆる分野の評価に共通する基本的な項目あるいは課題を把握することで、アート独自の評価のポイントをあぶりだせたらと願っています。

レクチャーの内容は、ゼミ生がレポートしてくださいますが、まずは開催概要の記録まで。


【第4回評価ゼミ】
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■日時:2010年10月12日(火)19-21時 
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■講師:総務省行政評価局政策評価官室 総括評価監視調査官 柴沼雄一朗さん
■内容:「行政の政策評価」
国は政策評価について。取り組みの概要や国の政策評価の標準モデル、各種ガイドライン等を学ぶ。
・19:00~20:00 柴沼さんレクチャー
・20:00~21:00 質疑・応答、ディスカッション
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■講師プロフィール
柴沼雄一朗 (しばぬま ゆういちろう) 
総務省行政評価局 政策評価官室 総括評価監視調査官
平成7年、総務庁(当時)に入庁。人事・恩給局(公務員制度改革、人事評価の試行)、統計局(統計関連業務の民間開放の検討)、行政評価局総務課(行政評価機能の抜本的強化方策の検討)などを経て現職。


■配布資料
•「国の政策評価制度の紹介」(総務省行政評価局 柴沼雄一朗)

(セルフリサーチ資料)
•『中之条ビエンナーレ2009 公式ガイドブック』http://nakanojo-biennale.com/   
•中之条ビエンナーレ 評価関係資料
•『メセナnote62号』―「アートプロジェクトのための経済波及効果検証」(企業メセナ協議会、2009年)
•『地域創造』―連載:文化政策の行政評価[第1回~4回] (地域創造vol.22・23・24・25、2007~2009)


■参考文献・資料
•「総務省 行政評価局パンフレット」(2010年)
•総務省行政評価局 「政策評価よくあるご質問(FAQ)」http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/kyotsu_n/faq.html  
•総務省 政策評価の総合窓口 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/seisaku_n/index.html  
•総務省 行政評価局(コンテンツ案内)http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/kyotsu_n/saitomap.html  



【若林】

研究会2|議事メモ

第2回TARL評価ゼミ研究会
日時:2010年10月4日(月)19時-
場所:小金井アートスポット シャトー2F
内容:
1)前回の議論の振り返り
2)事例報告『つなぐNPO 山梨県立博物館の通信簿』
3)ディスカッション


以下は、ディスカッションの話題を中心にまとめています。

■ 報告書を読んで
・(一般的な評価の) コンセプトから導き出すというよりは、逆の方法をとっているのではないか。
・ 観客の育成になっているのではないか(教育的な項目)。全部回答したら、いい博物館になるのか。万人向けの博物館はできるだろうが、突出した部分が削られるかもしれない。
・ そもそも(評価に)コンセプトやアイデンティティづくりから市民が関わっていけるのか。
・ 市民は色んなレイヤーがあるし、モチベーションも違うけど、任意に汲み取ることで説明ができてしまうのではないか。
・ 博物館の行政評価と市民評価も総体を評価する材料として使えるのではないか。ただそれがお互いに対応している項目になっているのか、またはその情報を同じ議論のテーブルにつなぐ人がいたのか。
・ 外部の第3者機関は専門家と市民の評価をあわせたものになるのか。
・ 誰が評価の材料を集めて、分析をして、評価をするのか。

■ 評価と説明責任
・ 評価をやらなければいけない空気=説明責任。
・ 評価は「ネガティブな面を見つめて、直してほしい」ということがスタートなのではないか。
・ ポジティブなものを育てる仕組みになっていないのではないか。
・ 公的資金が投入された時点で、説明責任が生まれるのではないか。
・ ある程度の説明責任をクリアしたら、面白いことをやればいいのではないか。
・ 有名美術館が上手くいっているのは、集客と経営が上手くいっているからではないか。その間は市民から不満が出てこない。説明責任はそれほど問題にならない。ただし(その説明の基準が)下降線をたどったときにどうなるか。説明責任のデフレスパイラル。

■ 「面白いこと」を育てる評価〜アートプロジェクトの時間
・ 本当の意味でポジティブなものを育てる評価が「面白いこと」を評価するものであれば、それはないのかもしれない。
・ いまは「面白い」ということが経営的な視点から説明されているのでは。人がいっぱい入った=面白かった結果になっている。 面白さを実現するための手段の調整になっている。
・ 面白いものが増えてくるような評価のありかたはあるのか。現状ならば「いかに上手く説明するか」はできるのではないか。枠組みを問うような評価はありうるのか(そもそも必要なのか)。
・ いま有効である仕組み=「人が来た」という説明、が言えなくなるような状況を予見できるのであれば、変えなければいけないかもしれない。
・ 人は少ないけど、面白いことがある。こっちをプッシュできるような評価のあり方はあるのだろうか。
・ 初年度は駄目なのかも知れないけど、次年度以降も続けていけるか、も重要か。
・ マジョリティーの価値観ではないもの。
・「タモリ倶楽部」的なものはないだろうか。でも、 マイノリティーをとってマジョリティー化している?
・ すべてのアートプロジェクトに同じような評価軸をつくろうということに無理があるのではないか。
・ 妻有は一回目にがつがつ評価をいれなかったから成功したのでは。 瀬戸内はその練習があったから出来た。 評価にさらされなかった最後のアートプロジェクトなのでは。
・ 地域と言われたことで評価の時間軸は変わったのではないか。 単年度ではなく「時間のかかること」という考え方が浸透してきたのでは

■ 評価とイノベーション
・ 評価がマーケティングにつながっていないのではないか。重なるけれど、評価のほうが、射程が広いのではないか。マーケティングより意思決定の上位にある(影響する)のではないか。
・ マーケティングはブレイクスルーやイノベーションは生まれない。イノベーションは評価に組みこめないのか(だから面白いものが生まれないのか)。
・ 予想できない状況をつくるのが一番面白い状況。それをどうつくるのか、を考える材料になりうるのか。
・ イノベーティブなヴィジョンを生み出す、とすれば第一回がイノベーションなのではないか。
・ イノベーションをどう組みこむのか。イノベーションを生まれてくるような方法。
・ イノベーションを継続的な成功体験にしていく評価。やり方自体もイノベーションが必要だけど、発想そのもののイノベーションが生まれるようなことがありえるのか。
・ 社会的な投資としてのアートプロジェクト。

■ 成長させる戦略的な評価
・ 防衛的ではなく、成長させる戦略的な評価。
・ 個々でクリエイティブな評価体制をそこでつくっていけるか。
・ 予測不可能なものを組みこむ評価ならば、何でもありになってしまうのでは。
・ システムとしてはとらえどころのないものになってしまう。
・ 組織の目的によって方法を変えていくという意味でクリエイティブ。
・ 成長させる戦略的な評価は外に出さなくてもいいのではないか
・ プロジェクトにクリエイティビティがあるかどうか、なのか。
・ つまんないことを説明しようとしたら、(プロジェクトとして)次の段階にはいっていくのでは。地を這うように生まれたプロジェクトと戦略的な評価→ステイクホルダーが増えると防衛的な評価を組み合わせていく。
・ アートプロジェクトはどんどんステイクホルダーが増える。説明する対象が増えていって、自分で自分の首をしめてしまう。現実的に広げていかざるをえない形式なのではないか。
・ 防衛的な蓄積は出てきている。いかに使いこなせるかの現状。実は使いこなせば使いこなせるほどつまらなくなる。でも、使えば使うほどお金がとれてしまうとか。
・ 既存の評価軸におさまらないところへお金が流れていく仕組みをつくるには。
・ ポジティブで攻撃的な評価とは何か。

■ 評価対象の枠組み
・ プロジェクトのフレームと中身の問題。フレームは企画の組み方、それが作品評価とも密接に関係してくるのではないか。
・ アートプロジェクトが出てきたことで、評価の対象の枠組みが広がったのではないか。
・ 分けて考えることは古いといえるかもしれないが、それに合った何かがまだ出来ていない。
・ 批評の課題でもあり、ポジティブな評価の課題でもある。そこに踏み込むことで、その領域が見えてくるのではないか。
・ 地域を軸に考えると、評価をする人が同化してしまう。アートプロジェクト=みんなを内輪にしてしまうもの。もしかしたら、「第3者」がいい、という視点も変わっていくのかもしれない。
・ 客観性をもっているか、が、共有できる説明の言葉をもっているかどうか、に。
・ 万人に独自のことをやっているなと分かるような評価。実は「評価はされている」ということもあるのでは。評価と呼ばれていないものを評価と呼んでみる方法もあるか。

■ 「アート」ではない問題
・ 「アート」の問題ではないことが、沢山あるのではないのか
・ ベースとなるような一般的なものができれば解決する問題もあるのでは

■ 今後のこと
・ 具体例がなさすぎて、話す材料がない
・ 防衛的な評価を検証していっても外堀を埋めて終わるのではないか
・ やっている人を呼んでディスカッションをするとか
・ ひとつのケースで、防衛的と攻撃的なあり方を2つ出すのはどうか
・ 材料として何をやるのか

10/12 第4回ゼミの参考資料 (事前連絡)

いつのまにか金木犀がほのかに香る季節になりました。
猛暑を予感させる暑い日に始まったTARL評価ゼミも、早いもので今月で折り返しです。

以下、第4回の参考資料です。
事前に目を通しておいていただくと、当日の理解が深まりそうです。
おそらくアート関係の講座で国の行政評価について話を聞く機会は初めて(orかなり久しぶり)ではないかと思います。
ゲスト講師の柴沼さんとの事前打合わせでは、「細かな評価手法に関しては国より地方自治体の方が進んでいたりするんですよ」との、興味深いお話もありました。
ゼミ生の皆さん、どうぞお楽しみに!

サブゼミ「研究会」も順調に開催中。今週10/5(火)[すみません、10/4(月)でした]19時から。トピックは「ミュージアムの通信簿」(つなぐNPO)です。


【第4回評価ゼミ】
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■日時:2010年10月12日(火)19-21時 
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■講師:総務省行政評価局政策評価官室 総括評価監視調査官 柴沼雄一朗さん
■内容:「行政の政策評価」
国の評価システムは?地方自治体の方が進んでいる?!―行政の政策評価制度の概要、各種ガイドライン等を学びます。
・19:00~20:15 柴沼さんレクチャー
・20:15~21:00 質疑・応答、ディスカッション
------------------------------------

以下、事前の参考資料です。
1)総務省行政評価局 「政策評価よくあるご質問(FAQ)」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/kyotsu_n/faq.html

2)総務省 政策評価の総合窓口 
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/seisaku_n/index.html

3)総務省 行政評価局(コンテンツ案内)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/kyotsu_n/saitomap.html


※セルフリサーチ用資料は以下を配布します。
・『中之条ビエンナーレ2009 公式ガイドブック』http://nakanojo-biennale.com/
・中之条ビエンナーレ 評価関係資料
・『メセナnote62号』―「アートプロジェクトのための経済波及効果検証」(企業メセナ協議会、2009年)
・『地域創造』―連載:文化政策の行政評価[第1回~4回] (地域創造vol.22232425、2007~2009)


【若林】

レポート|第3回「企業メセナの評価」

ゼミ生/石田佑佳

アサヒビール芸術文化財団の加藤種男さんを講師にお迎えした第3回評価ゼミ。ところどころにユーモアを交え、穏やかな口調で話されていた加藤さんの姿が印象的なゼミとなりました。アサヒ・アート・フェスティバルに関わる様々なアートプロジェクトの例を、加藤さんご自身が撮影した写真の数々と共に紹介していただき、目にも刺激的なレクチャーでした。





Ⅰ.加藤さんのお話の内容

0.イントロ
結局は何を達成したいのか?それを考える必要がある。評価する際には、達成したいことが思っていた通り実現できているかを検証する。

しかし、アートプロジェクトでは、期待していたことが実現しなくとも予想外の事柄が実現する。ここに価値があり、重要となってくる。したがって、評価ではこれをうまくすくい上げなければならない。予想外のことなので、事前に設定した基準にあてはめることが難しくなるが、その事実こそが新たな指標になり得る。つまり、無理にでも評価基準にあてはめなくてはならないことが起こった、ということを成功の要因とするのである。


1.アサヒ・アート・フェスティバル2010
<事例紹介>
① 岩見沢アートプロジェクト「ZAWORLDⅡ」(北海道岩見沢市)
中心市街地活性化事業の助成金を得るなど、地元から厚い信頼を得ている。今後、地元の百餅祭りやNPOとの連携による展開に期待。
http://www.artholiday.org/

② ”生きる”博覧会2010(宮城県本吉郡南三陸町、大崎市)
それぞれの家の物語を丁寧に聞き出すことで、自己アイデンティティを確認。ご近所さん同士のつながりを生み出すきかっけになるなど、コミュニティ再生の可能性を開いている。
http://www.envisi.org/

③ 淡路島アートフェスティバル2010(兵庫県淡路島)
廃校をリノベーションしたノマド村を恒常的拠点とし、全国からお客さんが来る。地元の理解と応援が確立され、海外とのパイプができている。
http://awajishima-art-center.jp/

④「甑島で、つくる。」KOSHIKI ART EXHIBITION 2010(鹿児島県薩摩川内市)
様々な資源が眠る宝庫。年を経るにつれて、既存のコミュニティを越えたコミュニケーションが発生している。
http://koshikiart.chesuto.jp/


2.アサヒ・アート・フェスティバルとは何か
新しい市民社会をつくるプロセスとして、アートによるコミュニティの再生もしくは新しいコミュニティの創設を目指している。

田舎の人ほど「ウチには何もないよ」と言うが、気付いてないだけで資源はある。クリエイティブなセンスをもった人達の力によって、それらを発掘し活かしていきたい。何の目的も持たないアーティストの創造性が、コミュニティづくりのヒントになるのではないか。だから、アーティストには企業の基準を超えた、意表を突くような表現活動をしてほしい。他方、伝統的な物が既に未知なるものとなっている今日において、伝統的な物の中にも新しい価値があるかもしれない。どれだけ多くの資源を発掘し、ただ保存するだけなく、生活の中に生かしていくかが大切である。

外からアーティストが入るとき、勝手に地元の人達が理解できるレベルを決めてはいけない。地域の人々に理解してもらいたいと思うのであれば、プロデュース側も分からないくらいのインパクトがなければならない。そのインパクトによって、ものの見方が変わる人がいる。そこからさらに動きが出てくることを期待。

<事例紹介>
○すみだ川アートプロジェクト:wah「すみだ川のおもしろい」展
人のアイディアを実現できるという点で、自分のアイディアを自分で実現したがるというアーティスト観を超えている。
http://www.asahibeer.co.jp/csr/soc/activity.html


3.最後に
アサヒ・アート・フェスティバルでは、評価の定まっているものではなく、次の二つの価値基準に沿ったものを対象としている。
(1)未知なるもの
(2)古くて今日見向きもされないが、本当は面白いものの再生

アートプロジェクトは、最初は課題を考える人達のIssue Communityでいいのだが、最終的には地域全体を動かすRegional Communityになってほしい。





4.質疑応答
※一問一答ではなく、加藤さんが答えた内容をいくつかの項にまとめました

評価する点について
来場者数はもちろん多い方が嬉しいが、もっと大事なのは参加より「参画」する人の数。
ただ見に来るだけでなく、どれだけ多くの人が参画してくれるか。例えば地域の人とつなげてくれる人、料理をつくってくれる人等、手伝ってくれる人がどれだけいたかを重視している。
だから、できるだけ開かれたプロジェクトを目指している。地域の人が「こうやりたい」と言ったら変えられる、フレキシブルなプロジェクトであることが重要。変わっていくことで、事前に設定した指標を超えることができる。

組織に対する説明とフィードバックについて
直接現地に行って、根掘り葉掘り話を聞き、報告書を作成する。助成に関しては、すべて第3者の検証を受け、目的通りうまくいっているかプログラム評価をしてもらっている。第3者評価を受けて、自ら再検証する。社内理解を得るためには、会社の原理・原則に立ち返って説明をする。

アートプロジェクトの評価と方法について
個別アート評価・個々の作品論には足をすくわれそうになる。個々の作品論を越えなければ、プロジェクト評価はできない。プロデューサーは、人の言う事を調整して、皆がやりたいことをできる、そんな場面をつくれる人であるべき。多数決ではなく、「寄り合い」のような、議論による合意形成が重要。


Ⅱ.感想

個々のアート作品にこだわらず、プロジェクトを行っている地域で何が起こったのか、どんな動きが起こったのかを重視されていることが印象的でした。プロデューサーのマネジメント、アーティストの制作、市民グループのまちづくり等々、切り離すことのできない要素が、それぞれのアートプロジェクトにあると思います。にもかかわらず、特定の一点だけを取り上げて評価すると、プロジェクト全体での効果・改善点がうまく浮かび上がらず、失敗するのかなと思いました。
 加藤さんをはじめとするアサヒ・ビールの方々が、助成したプログラムに関してはできるだけ現地に足を運び、丁寧に話を聞くという姿勢に敬意を表します。実際その場所に行かなければ分からないこともたくさんあるのがアートプロジェクトの特徴だと思うので、評価においても現地に行くという行為は重視されるべきだと思います。

9/14 、第3回ゼミ開催

9/14(火)、第3回目の評価ゼミを開催しました。
ゲスト講師は、アサヒビール芸術文化財団の加藤種男さんです。
























今回のテーマは「企業メセナの評価」。
加藤さんをゼミにお招きし、20年間携わっておられるアサヒビールのメセナ活動の
評価について話を伺いたかった理由は2つありました。

一つは、他の社会貢献活動の評価指標とは別に、メセナ(芸術文化支援活動)用の指標も作っておられること。これは企業の中ではめずらしいと思い、ぜひ詳しく話をきけたらと思いました。少なからぬお金を投じて外部評価を受けた結果、やはり自ら活動検証する重要さに気づいた過去があったとのことでしたので、アサヒビールとしての主体的な評価の取り組みについてうかがえたらと思いました。

もう一つは、徹底した「現場主義」を貫いておられること。
加藤さんは、全国各地のメセナ含むアートプロジェクトを、年中行脚して見ておられるので、
どのような視点でそれらを“評価”されているのか(いなか)お話しいただくと、
本ゼミにとっては大変参考になるのではないかと思ったからです。

レクチャー内容の詳細は、ゼミ生のレポートに譲りますが、
以下、今回のゼミ概要を記録します。

【第3回評価ゼミ】
------------------------------------
■日時:2010年9月14日(火)19-21時 
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■ゲスト講師:アサヒビール芸術文化財団 事務局長 加藤種男さん
■内容:「企業メセナの評価」
他団体への協賛や寄付をおこなう、あるいは自ら文化活動を主催する企業メセナの現場では、
どのような観点で評価をおこなっているのか。現場の実践と実情を学ぶ。
・19:00~20:30 加藤さんレクチャー
・20:30~21:00 質疑・応答、ディスカッション
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■講師プロフィール
加藤種男 (かとう たねお) 財団法人アサヒビール芸術文化財団 事務局長
1990年にアサヒビール(株)企業文化部課長就任以来、企業によるメセナ活動を幅広くリード。2002年より現職。アサヒビールのプロジェクトとして、アサヒ・アート・フェスティバル、ロビーコンサート、文化・音楽講座等多彩なメセナ活動を展開。アートと市民社会をつなぐ企画のプロデュースを多数手掛ける仕掛け人としての顔も持つ。2004年~2009年、横浜市芸術文化振興財団専務理事として横浜市の文化政策推進の旗振り役も務める。
アートNPOリンク理事、日本NPOセンター評議員、埼玉県芸術文化財団理事、企業メセナ協議会理事・研究部会長。共著に『新訂アーツマネジメント』。

■配布資料
• 加藤さんレジュメ「アートプロジェクトを評価するために―アサヒ・アートフェスティバルを例として―」
•AAF(アサヒ・アート・フェスティバル)検証シート
•ニューズレター「アサヒビールMECENAT」 vol.27(2010 Jun.-Aug.)
•「アートツーリズムでいこう ASAHI ART FESTIVAL2010」
•『Wah<すみだ川のおもしろい>展 図録』
•「企業メセナにおける評価の取り組みヒアリング調査」(企業メセナ協議会、2003)
•「メセナリポート2008」(企業メセナ協議会、2008)

(セルフリサーチ資料)
•『山梨県立博物館の通信簿―エヴァリュエーション・ツアー・チェックポイント帳』 (つなぐNPO+山梨県立博物館、2006)
•評価ゼミ9/1研究会レジュメ 事例報告:『2008鳥の演劇祭 評価報告書』

■参考文献・資料
•『アサヒビールメセナデータブック』 (アサヒビール株式会社、2003)
アサヒビールの文化・社会貢献活動 http://www.asahibeer.co.jp/csr/soc/index.html
アサヒ・アート・フェスティバル http://www.asahi-artfes.net/


今回は、終了後に交流会も開催。
加藤さんを囲み、にぎやかに話に花が咲きました。
























【若林】

9/14 第3回ゼミの参考資料

【第3回評価ゼミ】
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■日時:2010年9月14日(火)19-21時 
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■講師:アサヒビール芸術文化財団事務局長 加藤種男さん
■内容:「企業メセナの評価」
企業の社会貢献活動・メセナ活動の評価について。現場の実践と実情を学びます。
・19:00~20:15 加藤さんレクチャー
・20:15~21:00 質疑・応答、ディスカッション
------------------------------------

以下、事前の参考資料です。
1)アサヒビールの文化・社会貢献活動 
http://www.asahibeer.co.jp/csr/soc/index.html

2)アサヒ・アート・フェスティバル 
http://www.asahi-artfes.net/


※その他、当日配布資料多数あります。


※セルフリサーチ用資料は以下を配布します。
・『ミュージアムの通信簿:山梨県立博物館の通信簿』 (資料提供:つなぐNPO)
http://www2a.biglobe.ne.jp/~yamaiku/pj/eva.htm


【若林】

研究会1|議事メモ

第1回TARL評価ゼミ研究会
日時:2010年9月1日(水)18時-
場所:小金井アートスポット シャトー2F
内容:
1)研究会の趣旨説明
2)事例報告『2008 鳥の演劇祭 評価報告書』
3)ディスカッション


以下は、ディスカッションの話題を中心にまとめています。

■ 評価報告書を読んで
・どういうアンケートだったのかを知りたい。
・県広報は、新聞折り込みで換算できるのか?計量できない効果は?
・いつもこのような調査・換算のしかたは、どこか附に落ちない感じがする。
・どうにか数値を出したいということでは。「費用が回収できた」といわなければならないので、ある意味かけになってくる。
・運営側と外部評価側の意思の共有がはかれているのではないか。
・評価をする人たちとうまく意思の疎通をはかっていることが、評価を成功させるひとつの方法ではないか。
・評価事業のコストは?→費用と実施メンバー
・どのようなフィードバックがなされたのか?誰に読まれているのか?
・今後の変化をどのようにとらえていくのか?次回の報告書で変化を追っていくことができるのか?経年変化を追えるようになっているか?
・元データを出していかないと、他の人たちの分析や引き継ぎに対応できない。

■ アンケートの手法1
・満足度をとったうえで、記述式で「どこがよくなかったのか」などをとらないと、次の改善につながっていかないいのでは。
・「なにが不満だったのか」を聞くようなアンケートにしていかないと、次につながらない。
・「不満だった」とだけ聞いても改善ができないので、「なにが不満だったのか」を聞くことで、2度おいしいアンケートになるのでは。
・満足度を数値で表現するとフィードバックを得やすくなるが、記述式が多ければ多いほど回収率が低くなるという問題がある。
・アンケートと違う手法で聞く、という方法もある。アンケートで「不満だ」と答えた人に、ヒアリングにいくなど。ただしこの方法だと数はこなせない。どういうものが一番ほしい情報かによって、聞く方法が違ってくる。
・全町民ではなく、100人~200人のグループを抽出して、その人に聞きにいく、という方法のほうが良かったのではないか。今回の結果では、「劇場にいった人」「アンケートに答えた町民」「アンケートに答えなかった町民」という3つの層にわかれてしまっている。
・小さなコミュニティだから全町民アンケートが実現されているが、逆にいかない人が「ハブ」みたいな扱いになってしまっている危険性もあるのでは。
・なぜ、「作業検討部会」があったのかを聞きたい。なぜ第1回目の前に「作業検討部会」を組織して、評価まで組み込んでやろうと思ったのか。

■ 評価の対象は誰か〜誰による、誰のための評価か
・評価がでたときに、誰がその責任者になるのか?評価の依頼者は、その評価の報告書にはなにもコメントを残さないものなのか?
・もしやるのであれば、評価者の意図がまとまって残っていくのが良いのではないか。
・この評価報告書が誰に読まれているのか、というのはけっこう重要。それについても、どうだったのかを聞きたい。劇団員はこの評価報告書をどう思っているのか?誰のための評価なのか?

■ 満足度と達成度
・ブログで、評価報告書を読んだ人のコメントがあって、「「満足度」ではなく「達成度」をはかるべきではないか」と書いてあった。確かに、指標を設定してその成果を見るのであれば「達成度」である。
・アンケートをとっただけだと「満足度」しかとれないのではないか。なにをもって「達成」したと考えたかという尺度をもうけないと、アンケートの結果を「達成度」に結びつけることができない。
・評価の結果をどのような目標に結びつけていくかという問題がある。「次は「満足度」の高い人を、これだけ増やす」というような目標を設定していかないといけないのでは。
・「プロセス評価を重視する企業が増えている」という記事を新聞でみた。「達成度評価」だと低い目標を設定して、低い目標を達成する社員が増えてきてしまうらしい。
・達成度重視、結果重視にしてしまうとそういう問題は生じてしまう。そこをうまくいかせる必要がある。
・目標はもっと前向きなものがよい。それが評価から入ってしまうと、途端に、低い目標になってしまう。例)「4割っていうと厳しいから、2割にしておこう」など。

■ 評価の幅と比較対象
・それは時間の幅の問題なのか?全体としての運営の評価でみないとはかることができない。目標をトータルで達成できたかどうかという「幅」の問題もあるし、1年ではなく、3年・5年という時間的な「幅」の問題もある。
・「幅」という問題はある。1つの目標に向かっていくにしても、「今年度はここに力を入れる」というようなやりかたもある。そうであるとすれば「評価のための評価」というやりかたが必要になってくるのでは。
・数字をどう表現していくか、ということが評価の報告書づくりでは大切になってくる。
・「似た他人」を設定する、というけれど、そういうものはないのではないか。ある程度、基準となるベースを設定していかないと、それぞれの事業体が好きな「似た他人」を選んでいってしまう。
・片山さんは、「過去の自分」を推奨していた感じだった。アートプロジェクトの場合、個別性が強く「似た他人」を探しにくいので、「過去の自分」を基準とするべきではという感じだったと思う。
・「似た他人」というのはなにを選ぶかはとても大きい。すぐ「他と比べてどうなの?」という質問をうけることが多い。
・基準=スタンダードをつくる、というと「全国標準学力検査」みたいになってしまうのではないか。
・全体としてなんとなく共有されている基準のようなものはある気がする。
・業界勢力図のような、全体のマトリックスがわかるようなものが最初にあればよいのでは。
・ある種、図にはしたくないけれど、図にはすべきものがあるようなぼんやりとしたイメージはある気がする。
・「高さ」とかではなく、「公立/民間」「大きい/小さい」という客観的なものが基準になっていくのか?
・質の問題もある。シアターであれば「アングラ系」「明るいコンテンポラリーダンス」など、それぞれによって、あるべきシアターのイメージは違ってくる。
・ある程度、「自己評価」をしたうえで、第三者に方向性についてアドバイスをもらうというような仕組みが必要なのでは?そうすると、「似た他人」を選ぶのは、「自分」?

■ アンケートの手法2
・アンケートに答えてくれる人は、プラス評価の人が多いのでは。
・どうやってマイナスの意見を拾うのかは、もっと考えたほうがよいのでは。
・アンケートだけでなく、mixi、twitterなど、複数のチャンネルを持つというのは、ひとつの解決策では。
・ハッキリ失敗したプログラムは、ハッキリ悪い結果があがってくる。
・悪かったときは、けっこう悪いことをアンケートに書いてくる。
・「不満な点はありますか」と聞くとかえってこないが、「改善する点はありますか」と聞くと、けっこう書いてくれる。

■ 報告書の対象は誰か〜どう伝えるか
・誰にむけてつくっている評価報告書なのか?
・①伝えたい内容だけをまとめたものと、②ガッツリしたデータと分析をまとめたものがあればよいのではないか。例)(財)地域創造の「これからの美術館のありかたについて」報告書
・今はどこもそうなっている。特に企業では「1枚にまとめて」といわれることも多い。
・「報告書」というかたちをとらなくてもよいのでは。発表してディスカッションする機会をもうけたりとか、そのようなことのほうが意味をもってくるのかもしれない。
・「誰に伝えるか」という問題がけっこう大切なのではないか。

■ 今後のこと
・他の評価報告書も読んでみたい。
・同じように小さい市と大学が組んでアンケートを実施したところとして、「中之条ビエンナーレ」はどうか。その報告書がまとまっているのであれば、それを取り寄せてみてみるのはどうか。
・「中之条ビエンナーレ」は文化庁の創造都市部門で賞をとっていて、比較的、町をあげて活動をやっているプロジェクト。

NPOトリトン・アーツ・ネットワークは評価事業の実施を定款でさだめている

第1回ゼミで取り上げたNPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク (TAN)の定款。NPOとして行う事業の中に、「評価事業」も入っています。めずらしいです。

























評価事業を定款に定めるだけでなく、きちんと評価委員会を開催し、評価事業報告書も作成・発行しています。TANの評価事業は、評価の方法を模索した第1期から、試行錯誤も経て(これが大事)、現在は第3期に入っています。

【若林】

レポート|第2回「助成財団の評価」

神野裕史(ラボ生)

セゾン文化財団の片山正夫さんを迎えての評価ゼミ第二回。夏の暑さもあってか(?)、和やかでざっくばらんな雰囲気の中、進められました。あくまで足取りは軽やかでありながら、評価の本質に迫る気付きでいっぱいの2時間でしたので、皆さんともこのブログという場をお借りして、是非、共有させていただければと思います。



I:片山さんのお話の内容

評価とは?
助成財団が評価するのは、芸術ではなく芸術のプログラム(プロジェクト、助成行為)である。評価とは広い意味を持つが、ここではシステマティックな評価を意味する。

評価の目的とは?
助成財団が評価を行う目的は、①「改善するため」と②「説明するため」。

①「改善するため」
非営利事業であり、投資の成果が金銭的なリターンという形で表れない。そのため積極的に評価を行わないと次回の助成活動を改善することが出来ない。

② 「説明するため」
経営者である理事、また一般社会を代表する評議員に対しての説明責任を果たさなければならない。また、公益法人として税制優遇を受けており、直接的には主務官庁(文化庁→内閣府)に、また広くは社会に対して説明を行う必要がある。

助成財団にとって評価の在り方は?
助成財団が社会に果たす役割を完遂できるよう、評価も適した形で実施する。

① 助成財団とは?
政府とは異なる「公」の担い手である。政府は企業や市民からの税が支出のもとであり、様々な利害関係者皆の納得を得なければならない。予算の分配も様々な分野(福祉、教育etc)との兼ね合いで行われる。助成財団は資金源が別なので、新しいことを世に問うていきやすい上、芸術支援を目的とする助成財団はその資源全てをその目的に駆使することが可能である。
 例えば、セゾン文化財団は個人の財産を財団化し、その資金運用益を助成に活用している。助成金額自体は行政の文化政策予算等に比べれば小さいが、その助成額の何倍の効果が生まれると考えられる。マイケル・ポーターは、助成にはその助成金の金額分の効果だけでなく、①他の助成主体に「この助成先は優良」というメッセージを出すシグナル効果、②ネットワークを構築による、ヒトと知識の側面からの支援効果、③セクター全体の知識・技術水準を向上させる効果もあると述べている。

② 助成財団の目的達成に適った評価とは?

a) 助成活動を行う過程で以下のような評価の仕組みが導入された。

i)Goal Free Evaluation
作品単品ではなくアーティスト個人への支援を行う際に、支援することが被支援者の可能性を狭めては本末転倒である。①良い作品を生み出す、②活動のグレードアップがされるのであれば、後は個別のアーティストの問題であり、彼ら自身が向かう方向を決めるべきだ。そのため、評価は緩い枠組みで実施し、すぐには結果を求めず、結論を出さない。

ii) エピソード評価
客観的評価だけでは心がささくれてくる。ストーリーみたいなものがないと評価の聞き手の心が動かない。良い助成プログラムは良いエピソードにあふれているので、そのエピソードも評価の際に考慮に入れる。


b) 以下のような点に注意している。

i)評価のタイミング
事前・期中・事後と評価を行えるタイミングはさまざまである。事後評価もプログラム直後なのか、追跡調査なのかによって性質が異なる。

ii)評価の客観性
主観と客観は二律背反ではない。一枚のアンケートは主観的だが、枚数を集めれば客観的になる。
評価の客観性を担保するのは比較対象性。比較可能なのは「よく似た他人か過去の自分」。類似のプロジェクトがあるとは限らないので、助成前後での比較は重要である。

iii)新規性
皆がプログラムの結果に納得するものが良いものとは限らない。皆が賛成する安全パイは果たして助成財団が助成する必要がないのかもしれない


c) 評価を積み重ねた経験から得た学び

i)事後評価の指標は予め決めておくこと
ii)評価者を評価指標の設定時から関与させること
ⅲ)評価期間に幅を持たせておくこと
※ 評価期間が短いと過去の自分と評価できない




II. 感想

芸術分野でこそありませんが、財団法人で働く職員のひとりとして、お話を聞いてとても興味深く感じました。片山さんは謙遜も含めて、「ノルマがないので安易に流れることも」と仰っていましたが、収益で測られないからこその大変さもあるのが、財団という世界だと思います。
 財団2年目の青二才が言うのも失礼な話ですが、組織運営上、お金が入ることよりも出ていくことに厳しいのは当たり前。当然、支出に対しては成果が期待されます。お金を出すからには、その結果がどうだったのかは少なくとも経営陣に(自主財源以外の財源があるのであれば出資元にも)説明しなければならないのは営利企業と変わりません。
 そして、この財団にとって経営陣に当たる方々(理事・評議員)ですが、各界の著名人が務めることが多いかと思います。広い見識と知見をもちつつも現場には必ずしも詳しくない方々です。そのような方々にどう事業の意義や成果を伝えるかが財団職員の手腕の見せ所であり、難所のひとつなのでしょう。
 評価という手法は彼らとのコミュニケーションを円滑にする便利なツールだなと感じました。評価と聞くと、評価のアウトプットのひとつである評価報告書を想像してしまっていましたが、事業の開始前から始まっているというお話を聞いて目からうろこが落ちる思いでした。プログラムの設計時から評価者を参加させること(例:彼らに評価の仕組みを提案し、評価指標の合意をとりつけるなど)で、最終的な成果の評価に対して納得も得やすくなるのだと、自分の仕事と照らし合わせて腑に落ちました。もちろん評価は客観性が担保されていなければならないのでしょうが、その実施と活用は戦略的に行えるものなのですね!

→ 開催記録はこちら

8/3、第2回ゼミ開催

8/3、2回目のゼミを開催しました。
今月はお盆休みもあるのでイレギュラーに第1週目の火曜日開催でした。

猛暑の中、講師に来てくださったのは、公益財団法人セゾン文化財団の片山正夫さんです。

日本の誇る“政策提言型”芸術助成財団であるセゾン文化財団の評価指針についてうかがいたかったこと、片山さんは下記プロフィールにあるとおり、早くから非営利組織のプログラム評価を研究されてきたこと、そしてエピソードに注目する定性評価も早くから提唱されていたことから、今回ぜひにと講師をお願いしました。

レクチャーの内容は、ゼミ生がレポートしてくださいますので、まずは開催報告まで!  

【第2回評価ゼミ】
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■日時:2010年8月3日(火)19-21時 
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■ゲスト講師:セゾン文化財団常務理事 片山正夫さん
■内容:「助成財団の評価」
助成金を出す側はどのような観点で評価をおこなっているのか。現場の実践と実情を学ぶ。
・19:00~20:30 片山さんレクチャー
・20:30~21:00 質疑・応答、ディスカッション
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■講師プロフィール
片山正夫 (かたやま まさお) 公益財団法人セゾン文化財団常務理事
1958年兵庫県生まれ。一橋大学法学部卒業後、(株)西武百貨店文化事業部を経て89年(財)セゾン文化財団事務局長に就任。2003年より常務理事。94~95年、米国ジョンズホプキンス大学公共政策研究所シニアフェローとして、非営利組織のプログラム評価を研究。東京藝術大学、慶應義塾大学(大学院)、学習院女子大学での非常勤講師のほか、(公財)公益法人協会、(公財)助成財団センター、アートネットワークジャパン理事、市民社会創造ファンド運営委員、東京都芸術文化評議会専門委員、国際交流基金「評価に関する有識者委員会」委員、トーキョーワンダーサイト運営諮問委員、(学)国立学園監事等を務める。公益法人協会では法制委員会委員長として公益法人の法制・税制に関する提言活動を行っている。著書に『NPO基礎講座』『プログラム・オフィサー』『民間助成イノベーション』(いずれも共著)等。

■配布資料
•レジュメ「助成財団の評価」
•公益財団法人セゾン文化財団について
•「viewpoint第50号を迎えて」片山正夫(『viewpoint第50号』、セゾン文化財団、2007)
※ゼミ配布:セルフリサーチ資料
•『2008 鳥の演劇祭 評価報告書』(2009、NPO法人鳥の劇場/鳥取大学地域学部附属芸術文化センター)
•『2008 鳥の演劇祭 活動報告書』(2009、NPO法人鳥の劇場)

■参考文献・資料
•『財団法人セゾン文化財団2006年度事業報告書』(セゾン文化財団、2007)
•『プログラム・オフィサー~助成金配分と社会的価値の創出』(牧田東一編著、発行:編集工房 球、発売:学陽書房、2007)
•『民間助成イノベーションー制度改革後の助成財団のビジョンー』(助成財団センター編、発行:助成財団センター、発売:松籟社、2007)



















片山さん直筆の「評価」


【若林】

8月3日ゼミの参考資料

【第2回評価ゼミ】
------------------------------------
■日時:2010年8月3日(火)19-21時 
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■講師:セゾン文化財団常務理事 片山正夫さん
■内容:「助成財団の評価」
助成金を出す側はどのような観点で評価をおこなっているのか。現場の実践と実情を学ぶ。
・19:00~20:15 片山さんレクチャー
・20:15~21:00 質疑・応答、ディスカッション
------------------------------------

以下、事前の参考資料です。

1)セゾン文化財団ニューズレター『viewpoint No.50』 P9~10
「viewpoint 第50号を迎えて」by片山さん
http://www.saison.or.jp/viewpoint/pdf/10-02/viewpoint-no.50.pdf(PDF:1380K)

2)セゾン文化財団の事業について(事業計画、アニュアルレポート)
http://www.saison.or.jp/awardees/index.html
※2006年のアニュアルレポートは20周年特別号です。
http://www.nettam.jp/blog/2007/11/onienoaioaoaa/
毎年のアニュアルの堤理事長コメント、片山さんのコメントを読むと時代背景がみえてきます。

「評価」といわないなら何と表現する?

第1回ゼミでは、付箋ワークショップ形式で「評価に関する4つの質問」をしました。
4つ目の質問は、「評価という言葉を使ってOK?評価と言わないなら何と表現する?」。
皆さんからは、下記のような意見が出ました。

・ 「達成度」
・ 使ってよい。「値踏み」
・ 「価値判断」
・ 言葉は使いたくない
・ 「観測」「測定」など、価値判断的にニュートラルな言葉か
・ Twitterにおける「ふぁぼり」みたいな言葉
・ 「確認」
・ 使ってもいい
・ 評価という言葉を使ってもよいと思うが、それ以外の言葉を使うとしたら「意味づけ」か?
・ 「達成したことは何か?」(「達成度」)
・ 使ってOK。「順位づけ」
・ 「かたちに残すこと」
・ 「見直し」「review」「点数をつける」
・ 目的によっていろいろな言葉でよいと思う。「レビュー“Review”」
・ 「振り返り」「Research」
・ 「レビュー」「振り返り」
・ 「評価」という言葉を使う領域と使わない領域を切り分けることが大切?
・ 使ってよい。「対話」「(指標)」
・ 「レポート」「報告」


どれも、なるほどです。
「評価」という言葉を巡る議論は、のちのゲスト講師をお招きするゼミでも
話題になると思いますので、引き続き考えていきたいと思います。


最後に、初回ゼミ内で、口頭でお伝えした私の付箋メモを、以下に書き留めます。

・ マーケティング
・ 検証
・ モニタリング
・ 振り返り
・ アセスメント
・ スクリーニング
・ 査定
・ 見積もり
・ マーキング
・ 検査
・ rating


活動をよりよくしていくための点検行為、過去の活動のチェックと課題の抽出行為、一定の基準に達しているかを確認する行為、多数の中から選択・選考する行為、そのために点数をつける行為、まだ見ぬ知らぬもの・人にたいしておおよそのあたりをつける行為、説得材料や客観的な説明材料をそろえるための行為……。評価ってマーケティングではないだろうかと考えたこともあります。

「評価」とひとことで言っても、実際に行う中味や目的は、かなり異なることを、今後のゲスト講師の評価事例からも確認していきたいと思います。


そういえば、「評価」の別の表現をいろいろ考えていて、
「評価」という言葉を英訳するときの難しさを思い出しました。
逆にevaluation、appraisal といった単語が同じ文章にあった場合、
日本語に訳す(訳し分ける)難しさも思い浮かべたりしました。


【若林】

初回ゼミの付箋WS

初回の評価ゼミでは「評価について4つの質問」への意見を
それぞれの受講生が付箋に書いて発表するワークショップが行われました。


以下はその成果をテキスト化したものです。

■ なぜ評価したいの?

・ なんで?と思うから
・ 伝えたいから
・ 後に続く人に実施したことからのフィードバックのリソースを提供したい
・ 地元の方々や税金を支払っている方々への説明責任を果たすため
・ 社会情勢的に求められているから
・ 税金を使って事業をしているから
・ やりっぱなしにしないため
・ 達成度を測り次の行動にいかすため
・ プロジェクトの達成度を確認すること
・ プロジェクトの向上や目標への接近を確かめたい
・ 税金を使ってアート振興をしたいから。
アートを社会に幅広く還元するシステムを構築したい
・ お金を出している人たち(経営者、行政・納税者、寄付者など)を説得するため
・ 事業を一環としておこないPDCAのCheckをおこなうため
→次のプロジェクトの改善につなげるため
・ みずからを客観視し、アート・マネージャーとしての立場を明らかにするため
・ 継続性の中で、正しい方向に改善していくため
・ 事業などの本質的な目標を確認するため
・ 運営資金の獲得のため
・ 関係者でプロジェクトの目標を共有するため
・ 興味のない人にも何らかの価値あるものと思ってもらうため
・ プロジェクトを継続するため
・ 投入する資源に見合う価値あるものを選ぶ
・ 目的にあった(適切な)ものを選ぶ
・ しないと、怒られるから
・ アートプロジェクトを運営側としてだけではなく
評価の視点から見ていくことでもっとよりよいものにしていきたいから
・ 「価値」を明らかにして、それを共有するため
・ 性格や特性に応じて区別するため
・ 他人と共有可能な言葉をつくることで共有不能なものの面白さも引き立つから
・ 認知度の向上→世界に与える影響を最大化するため
・ 自分たちのしていることを、自分たちの責任において評価することで、
社会に対して自らの役割を発信する力にする
・ 自分がプロジェクトをやる場合に、逆の“客観的”な基準を知ることで役立てたいため
・ アートに対して、どうこの時代、日本で評価するのか考えたい
・ 自分がいいと思ったものをどう表現すれば伝わる記号/言語
・ しないと活動の重要性が伝わらないから

■ 評価しないとどうなるの?

・ 成るようになる
・ 評価に手間取らなくてよい
・ 同じ間違いをする
・ 社会の中で「意味」を失う
・ アートが社会と交わらないまま「閉じて」しまう、
外部の人に知られなくなってしまう
・ 内輪で盛り上がって終わっちゃう
・ 感覚的な言葉、浅い判断、現在的な視点で判断される
・ 区分できない、始まらない
・ アーティストが食べていけなくなる
・ 資源投入の候補として順位がさがるもしくは外れる
・ 仕分けされる
・ 結果、次にお金が出なくなる
・ 注ぎ込んだ資源(カネ、モノ、ヒト)が有効に使われたか、
投資に見合った成果が出たのか不明なままになる
・ スタッフやお金の使い方が効率よくならない
・ お金がもらえない
・ 一度客観視しないと次の世代へプロジェクトの価値が受け継がれない
・ 外部への説明責任を果たせない
・ 助成金をもらえなくなる
・ プロジェクトの質(クオリティ)が下がる
・ 広がりがなく忘れられていく
・ 自分の立ち位置がわからなくなる
・ 自己満足、思い出作りで終わってしまう
・ なんとなく次のことをやってしまう
・ やりっぱなしになってしまい問題や改善点が明確にできない、
自己満足で終わってしまう
・ 存在しない、存在しなくなってしまう
・ 実務者とそうでない人の間に距離が生まれる
・ アピールポイントがよくわからなくなる
・ アーカイブされない、振り返る(考察の対象になる)ことがない
・ 事業の成果が明確にならない
・ よかった点、悪かった点を次へ活かすことができない、
継続する必要があるのか?
・ 次のステップ、改善点が見つけられない
・ アーカイブ化、共有化ができない
・ 記憶に残るが記録には残らない
・ 参加しなかった人にとっては無かったことになる
・ アートプロジェクトを行った意味が希薄化する


■ 評価で何を知りたい?

・ プロジェクトで、何が起こり、どんな(プラスの)影響を与えたか
・ やったことの意味、価値、社会的インパクト
・ 将来、その事業なりを行うことによって達成される目的を満たすために最適の方法
・ 存在価値
・ その存在価値
・ プロジェクトが実施された/される意味
・ いろんな意味でいろんな方々に必要だったのか
・ これまで何をやったのか(やったことの意義)
・ 多様性、開かれているか?
・ 計画との差異
・ 成果(予測も含めて)
・ 良い芸術作品や活動が実現されたかどうか
・ プロジェクトの設計者が、企画/運営によって
どんな風に世界を変容させようとしたのか、その文脈と、
やったことがその目的にどの程度かなったものだったのか
・ 目標とその結果
・ 次の展望があるか
・ 次へのチャレンジの可能性
・ 次につながる問題、改善点できれば良かったところも
・ 成果と何が期待されるか
・ 多数(少数)がどうとらえているか
・ それをやることの意義が多いか少ないか
・ ある機関、組織が何を大切にしているか、どんな傾向があるのか

■「評価」という言葉を使ってOK?「評価」と言わないなら何と表現する?

・ 達成度
・ 使ってよい、値踏み
・ 価値判断
・ 言葉は使いたくない
・ 「観測」とか「測定」とか?こういう価値判断的にニュートラルな言葉か
Twitterにおける「ふぁぼり」みたいな言葉
・ 確認
・ 使ってもいい
・ “評価”という言葉を使ってもよいと思うが、
もしそれ以外の言葉を使うとしたら「意味づけ」か?
・ 達成したことは何か?(達成度)
・ OK、順位づけ
・ かたちに残すこと
・ 見直し、review、点数をつける
・ 目的によっていろいろな言葉でよいと思いますが、レビュー“Review”
・ 振り返りもしくはResearch
・ レビュー、振り返り
・ 「評価」という言葉を使う領域と使わない領域を切り分けることが大切?
・ 使ってよい、対話(指標)
・ レポート、報告

付箋のテキストは、以上です。
評価の様々な側面が見えてきたのではないでしょうか。

他にも意見があれば、ぜひコメント欄への書き込んでみてください!!
受講生以外のみなさんからも大歓迎ですっ!!

次のステップはグルーピングです。
どんな方法があるでしょうか。
こちらのアイディアも募集中です!

7/13、第1回ゼミ開催

第1回評価ゼミを開催しました。
-----------------------------
■日時:2010年7月13日(火)19:00~21:00
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内) 
■内容:オープニングレクチャー「評価について考える」
■配布資料:
・レジュメ
・SWOT分析シート
・『メセナnote59号』
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ゼミ生とオブザーバー、事務局あわせて25名ほどが参加。
初回でしたので、まずはゼミ生一人ひとりに自己紹介からスタートしました。
参加動機や評価について思うことなど話してくださり、これからが大変楽しみになりました。

プログラムの企画当初は、初回ゼミではSWOT分析のワークショップをやろうと考えていましたが、ゼミ申込時の熱心なエッセイを拝読し、皆さん評価について既にいろいろと考えていらっしゃることがわかりましたので、それを共有したいと思い、ワークショップの内容を変更。
評価に関する4つの質問について、考えを出し合う付箋ワークショップを行いました。

・なぜ評価したいの?
・評価しないとどうなるの?
・評価で何を知りたい? たったひとつのことしかわからないなら、何を知りたい?
・「評価」という言葉を使ってOK?「評価」といわないなら何と表現する?


後半は、評価の基礎情報(以下)について話をしました。
でもこれはあくまでも「たたき」。
ゼミ生の皆さんと、これから時間をかけて「たたき」を進化させたいと思っています。

1) 評価とは何か?
2) なぜアートプロジェクトに「評価」が必要なのか?
3) 「評価」から最大限の成果を得るために
4) 「評価」のサイクル
   ・アートプロジェクトの実施サイクル
   ・評価のサイクル
5) 指標の設定
   ・必ず考えるべき5項目 
   (参考:東京アートポイント計画の評価指標)


これから2月まで、ゼミ生の皆さんと、評価についてじっくり考えていきたいと思います。
よろしくお願いします。



【若林】

ゼミ応募課題

1) アートマネジメント総合情報サイト「ネットTAM」に掲載されている「芸術文化助成入門」(全4回)を読み、「評価」についての自分の考えを論じてください。(A4一枚程度。書式・字数は自由)

2) Tokyo Art Research Lab連続ゼミに参加しようと思った理由と、受講後の抱負を記述してください。(A4用紙1枚程度・書式、字数は自由)