研究会6|議事メモ

第6回TARL評価ゼミ研究会
日時:2011年1月19日(水)19時-
場所:小金井アートスポット シャトー2F
内容:
1)前回の議論の振り返り
2)個人プロジェクトの報告とディスカッション

以下は、ディスカッションの話題を中心にまとめています。

■ アーティスト・イン・レジデンス
・ アーティスト・イン・レジデンスの世界的な組織(res artsist)。遊工房も入っている。アート界の人達が自由にやっている(評価はない?) http://www.resartis.org/en/
・ トランスアーティスツ(オランダ):世界中のアーティスト・イン・レジデンスの情報を集めたり、連携を図ったりしている。 http://www.transartists.nl/
・ Arts & Lawのピアメンタリング。同業者で、同じようなキャリアを積んだ人によるディスカッションの機会をつくる。最近では、国際交流基金と組んで、AIRのピアメンタリングもやっている。 http://www.arts-law.org/

■ 個人プロジェクト報告(大川)
・ おじいちゃん的な存在を考える前に、自分の関わるプロジェクトを家族構成で考えてみた。
・ 全ての役柄があるわけではない、ひとりで何役もこなしている場合もある、ということが分かった。
・ 全体の見通すことができて、それぞれの役割が分かる。その上で、足りないものも分かる。
・ でも、あくまでも自分の視点。他の人の視点もいれるといいのではないか。
・ 「誰が」を実名にしたほうがいいのか。複数の視点をあわせるならば、名前があったほうがいいのではないか。
・ 自分の関わるプロジェクトには、おじいちゃん的な人がいない。人の意見をまとめて、どう実行に移していけばいいかを分かっている人。かならずしも「アート」に詳しくなくともいい。一緒に面白がってくれればいい。「地域」をベースに活動しているため、地域のハブのような役割で、いろんな人を紹介してくれたりするのがいい。
・ 話を聞くだけでなく、ときには鋭い指摘をしてくれるような人。
・ はじめは「おじいちゃん的な人」がカウンセリングをしてくれればいいと思ったが、自分で分析することが評価につながるのではないかと思った。
・ (この分析のやり方は)自己分析のツールなのでは。心理学モレノのソシオグラム(sociogram)、教室の運営手法が参考になるかも。
・ 家族だからいいのか。役職で分析したら、指示系統がはっきり出てくる。家族だから、多様な側面が出て、記述しやすいのかもしれない。
・ そもそも、家族というメタファーとして捉えられることが幸せなことでは。
・ (家族以外の)いくつかの組織の特性を出して、それを選ぶところからはじめたほうがいいのではないか。
・ アートプロジェクトは長屋みたいなもの。企業みたいな感じがしない。
・ 宗教メタファー。はっきりと指揮系統がある。考え方を普及するのはいいかも。
・ (組織の)役割がどこまで多様なのかを考えたり、可視化するツールとして有効なのではないか。そもそも家族で捉えるということも含め。
・ こういう役割を可視化する組織分析のツールがあるのか。
・ who’s who法みたいなもの? 教育経営学、コミュニティ心理学、組織心理学が参照できるかも。
・ 組織分析ツールに使えるのではないか。(ぐるっと360°帆足さんが参考にした)チャールズハンディーの本は組織類型を出しているが、いくつかのプロジェクトを抽象化していくのはどうか。
・ ロール型はあるのか。カリスマ型は、外に文言を出すときに、その人が書くしかない。
・ 組織を類型化して、そのメリット、デメリットを指摘できるかも。
・ カリスマ型、ファミリー型、ロール型より、家族型のような言葉の使い方がいいのではないか。
・ サザエさん型、ちびまる子ちゃん型、ドラえもん型、マンガで学ぶ組織論?
・ 生きている人間を組織メタファーで使うことは、組織もそうだけど、構成員が成長していくことを捉えられる。経年変化も捉えられるかもしれない。
・ いまおじいちゃん的な存在はいなくとも、3年後には誰かがおじいちゃんになっているかもしれない。
・ アートポイント計画のプロジェクトは類型化ができるのではないか。
・ 本来は、どういうプロジェクトをやりたいから、どういう組織をつくっていくかを考える。
・ 終わり方が類型化や予測ができるのかもしれない。
・ 新しい人の募集の仕方が分かるのではないか。ボランティアのミスマッチの解決策になる。その組織が、何を提供できるかを考えられる。
・ 家族型はボランティアを集めやすい?家族型の現場はプロ的に仕事をする場所ではないが、楽しい。何か目的をもって参加すると難しい。インフォーマルなコミュニケーションを取れるかが大事になってくる。閉鎖的になりがちな危険性もある。入りたての人は馴染めなかったりする。
・ 組織分析、これはかたちになったら、使えるのではないか。
・ 評価には外向き、内向きがあるとすれば、内向きには組織的に考える必要がある、という流れ。これは組織的に考えるための分かりやすいツール。
・ 事業の評価と組織の評価という考え方で、これまでは事業評価のみが語られてきたが、組織の評価にも外堀と内堀があるのではないか。内堀は組織内の関係性を見ていく必要がある。
・ 組織の類型が決まれば、評価の軸も決まってくるのではないか。

■ 個人プロジェクト報告(石田(佑))
・ 助成について見てみた。企業メセナ協議会の助成認定制度がオーソドックスなもの。それでは基本的なものを押さえておけばいいということが分かった。
・ 町村レベルだと評価があいまいという話があったが、文化庁とか(大きな組織)が絡んできたときに膨大な定量評価が必要になってくる。
・ 企業とか財団は比較的理解がある。担当者が頻繁に変わるような大きな組織では、色んな言語をもたなければならないことが大変になっているのでは。
・ 企業メセナは基本的には事前評価なのだろうか。
・ 企業メセナにおける評価の取り組み。企業ごとに担当者が、まず社内に認めてもらうということが大事になってくるのでは。
・ 行政では組織の信頼性が企業よりも重視されるのではないか。行政は転ばないことが重要。組織が信用できるかが大きくなるのでは。
・ AAFも(誰がやるか、というより)「何をやるか」が重要になっている。
・ 説明の言葉の使い方だけではなく、何で信頼を得るのか、ということもあるのではないだろうか。どういう点が信用を得るために必要なのか。
・ 「アーティスト」に共通言語はない。アーティスト=個人くらいだから。行政や企業だと対組織的なコミュニケーションがある。
・ 地域だとそういう(個人レベルのコミュニケーションや特有の信頼のあり方)があるのではないか。市報に載る、飲み会など。
・ 個人間では事業内容での共感だけでは済まないこともある。
・ もっと大雑把ではないほうが図としては書きやすいかも。誰にとっては、どの評価軸を使えるのか。
・ アートの本質的な評価へは、とりあえず、いまある評価を積み重ねることで行くことができるのではないか。
・ 「アートの本質」を評価するとは、どういう状況を想定し、調査するか。
・ 実際に見に行くということ、ヒアリング調査をしていくということが大事。ぶつ切りにしたときに見えない関係性を見るようにしていく。人に会って、話してという行動が必要。そこで判断をしてほしい。
・ ただ、地域の人にインタヴューをしていても、「いわゆる」話が出やすい実感がある。誰に対して、どういう語りが出てくるような調査をすればいいのか。
・ いちばん早いのは、分かっている人(プロジェクト運営者)に聞いて、名前の出てくるような人に聞いていくのはどうか。いい面は拾えるが、恣意的なものになってしまう。長い年月を見て積み重ねていくしかない。
・ インタヴューの様子を何百頁の報告書を書くよりも、映像記録を残しておいたほうがいいのでは。

■ 調査の手法
・ ランダムサンプリングと雪だるま式サンプリング。
・ どういう研究をしたいかは何を明らかにしたいのかによる。キーパーソンを対象にしなければ分からない意味の世界を知りたいのであれば、そうすればいい。
・ (そういう調査をするならば)自らのポジションを明らかにしていけばいい。限界を見えるようにしておけばいい。
・ 大地の芸術祭の報告書がいいかもしれない。アンケート調査の結果が載っている。色んな利害関係の立場にある人に話を聞いている。
・ 報告書にあてはめて、図をつくってみるのはどうか。そこに足りないものなどを追加していく。

■ 評価をどのように反映していくのか
・ アートの本質を伝えたい、とは何か。好きなものを伝えたいとか、評価のレベルで言うことは微妙かもしれない。「好きじゃないから、やらなくていい」となってしまうかもしれない。
・ 本質的に伝えたい事は伝えるけど、評価では違った見せ方をする。
・ 内堀の評価を外に出さなくてもいい。みんなが内堀を言い始めると怖い。内堀では好き嫌いの議論に踏み込みつつある。でも、外堀での議論にそれが出てしまうと、みんなが意思決定できる状態になってしまうのではないか。外側の人が一緒に成長していく人になってしまう状態が危険では。意思決定できなくなる。

■ 個人プロジェクト報告(石田(喜))
・ 「社会」をどのレベルで想定するかでシステムの構築の仕方が違う。
・ ミクロ:固有名の集まり、個人に対する信用・想いへの共感。個人に基づいた寄付や購入であらわれやすい。ひとつひとつの金額は少ないけど、多数が集まること。
・ マクロ:行政など顔が見えない抽象的で匿名的、世間、不特定多数。中間支援組織が信頼できるか、妥当性があるか、で社会的信用をえる。そして、傘になる。団体や個人へのオーソライズと情報提供を組み合わせる。
・ AAFでは、AAFという傘でオーソライズされるが、個々のプロジェクトの自由度はまもられる。たとえばアンブレラ的な組織をつくっているアーティストギルド。
・ 情報提供をしてつないでいくというアンブレラ。たとえば認証マーク。
・ オンラインプラットフォームは活用されているのだろうか。まだ始まっていないから分からないが、アメリカ版は盛り上がっているらしい。日本でどれくらい機能するかが注目。
・ 組合的な考え方:必要だけど自分だけではできないから、メゾレベルで組織をつくる。社会的に必要だからプラットフォームをつくるという考え方。
・ 前者は参加する人が負担をする。後者はより幅広い人に声をかけられるが、個々人へどこまで響くのか。
・ AKBにお金を使う。メゾレベルだけど個人の感覚としてはミクロなのではないか。仕組みとしてはメゾレベル、参加する仕組みがミクロになっている。
・ メゾレベルで設定する枠組みは何にするのか。
・ 誰に対して評価を見せていくのか。そこにミクロ、マクロ、メゾがある。
・ 評価の内容が共感できるかどうか。ある領域を担うのであれば、それをどういう風に設定できるか。ある種の業界団体的なもの。
・ アンブレラに強みがあるとしたら何か。想いだけでつながるのでは不安。逆に面白いものができなくなる可能性がある。専門化による安定した判断はクオリティを保つには必要なのではないか。
・ アンブレラ組織の専門的な見識。
・ (資金調達に)複数のシステムが混在していて、みんなに見えている状況がいいのではないか。どれがいいか選択する仕組みがあること。
・ こういうことを理解して、やってみなよ、というコンシェルジュ的な人が必要。色んな人の相談を受けて紹介していくもの。
・ こういう場合は、こういう評価があるんだよ、と多様なものを見せていける。
・ 中間支援組織っぽい。中間支援組織のネットワークってないのだろうか。CANPANはそうなっている。
・ どういった情報を公開しているか。メゾレベルは企業を想定すればいいかもしれない。
・ プロジェクト全体のもっている理念への共感。理念と手段の妥当性でお金を出す仕組みになっているのではないか。
・ メゾレベルの団体も福武のようになると名前があって、世の中的に認知されている。組織はどんどんオーソライズされていくが、終わるタイミングも必要なのではないか。
・ 組織として信頼性をもちながらも、それを壊していくようなものがあるといいかもしれない。たとえば、事務局は信頼性を確保する方法をもたざるをえない。そこを壊すところをアーティストに期待している。
・ アワードが終わっていくのは硬直化しているからか。

■ 中間支援組織の硬直化
・ 時代遅れになってしまう、とか…。
・ 既得権が増えてきて利益団体化してしまう。認証によって権威をつくってしまう。組合的な組織の怖いところ。
・ 日本版アーツカウンシルは専門家が専門的な判断を下す組織として語られる。ただ、アーツカウンシルは意思決定を下すための材料も自分たちで集めており、そのための調査研究の組織がある。
・ もし、日本でやろうとすると委員会をつくって、材料集めは同じ行政の人がやってしまうことになるのかもしれない。
・ すでにある中間支援組織が連合を組んで、評価的な機能をもつようなかたちはありえないだろうか。
・ 評価だけを考える独立した組織があったほうがいいのではないか。適正な評価を純粋に考えるだけの第三者団体が必要なのではないか。組織としてみると「第三者」、人としてみると「おじいちゃん」。
・ コンシェルジェ的な機能をもつものなのかもしれない。
・ コンサル的なものまでもつ、たとえば自己分析ツールを使うような。
・ いくつかの仕組みがあったほうがいいというのは、硬直化してきたら、別の仕組みに逃げる。複数化のメリット。
・ あんまりがちがちにコンサルのようなかたちを取らないほうがいい。「おじいちゃん的な」みたいな言い回しの感じ。
・ (アートプロジェクトのスタッフの)ドラフト会議があってもいいのではないか。年1回、そういう場があってもいいかもしれない。公開スカウト、スカウトのエージェント…。
・ そのくらいのニュアンスの中間領域をつくっていくといいかも。
・ Tokyo Art Research Labはドラフト実現に向けた組織だったはず。ドラフトになったとき、こんなことできます、という人材をつくりたかった。甲子園のような存在。
・ ラボ全体で甲子園をやってもいいのかもしれない。それをプロジェクトの人に見てもらっていて、スカウトする。トレードとか。
・ トレードっていいのではないか。他のプロジェクトを知ってみる、交換留学的なもの。ひとつ魅力になるのかもしれない。このプロジェクトと提携してます(みたいな)。情報を共有しているような。
・ みんなで盛り上げていこう、という雰囲気ができる。全体を考えるような。それがボトムアップ的に出てくるといいのではないか。
・ モデルは提示する(こういう領域があります)として、ボトムアップに声があがってくると面白いのではないか。
・ ドラフトされて指名されたほうが、サポートしがいがある。
・ お互いにやりたいこと/やってほしいことが明確になるから、ミスマッチも少なくなるのではないか。
・ 事務局レベルでの人材の流動化。プロジェクトの積み重ねが出てきて、育ってきた人(中堅レベル)が宙ぶらりんになっていく時期が来るのだろうか。
・ ネットTAMキャリアバンクのリクナビNEXTみたいなもの。マッチングと人材バンクがあること:TARLがそうなればいいのではないか。
・ 他のプロジェクトのことを知っている、という素地がないとボランティアができないのではないか。
・ 組織分析とマッチングが一緒に機能するといいのではないか。

■ 今後のこと
・ 次回以降は原稿をどう書いていくか、を検討していく。
・ 全体の議論まとめ、各論(個人執筆)という構成はどうか。
・ 本当にドラフトとかやるか。

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