1/11、第7回ゼミ「ロールプレイング・ディベート」開催

第7回評価ゼミ、お疲れ様でした。 アートをとりまく関係者の立場になりきって意見を述べる 「ロールプレイング・ディベート」を試みましたが、いかがでしたでしょうか。

「アートをとりまく関係者の立場になって考える」ことは、
評価の仕組みづくりにおいて(プロジェクト推進においてもですが!) 極めて重要です。

こういう立場の人だったら、この案件はどう感じるのか、
何を求めているのか、何に触れられたくないのか、
何に達成感を感じるのか、どんなエピソードが共感を呼ぶのか、
誰が参加すると説得力がぐんと増すのか、誰にいてほしいのか・・・。
あれこれ考えると、自分の作りたい評価に関わってほしい人や、
集めておきたい声なども見えてくるのではないでしょうか。

今回は、アートフェス継続推進派VS反対派の議論という設定にしました。
ディベートの前のグループワークでは、反対派は早い段階から、
いろいろな意見が出て活気がありました。 一方の推進派はなかなか進みません。
   う~む。やっぱりそうか…。がんばれ推進派。
…と思いながらディベートに入りましたが、
ディベートでは、時間が経つほどに推進派が不思議と元気と勢いを増したように思いました。

なぜでしょうか。

そもそも皆アートに関心があるから反対しにくい、など
いろいろな理由があると思いますが、文プロ石田さんが感想で言われた
「単なる感情論での反対はやりにくい。別に推進したいこと(福祉施設建設)があって、
これよりその対案が大事、という意見は述べやすかった」 との感想は、的を得ていると思いました。

評価では、(事業仕分けの例でもわかりますが)、
感情的な反対意見というのは意外と恐れる必要はなく、
異なる推進案があるときほど、こちらの必要性、正当性を説くのが難しいのですね。

そういった難しさをふまたうえで、どんなロールを登場させたかったかを
振り返ると、評価に関わっておいてほしい人(←推進派に登場させたロール)や、
日頃から意見を丁寧に聞いておくべき人(←反対派に登場させたロール)が
なんとなく浮かび上がってくるように思います。

今回、評価指標を参考情報として出しました。
それを皆さんがどのように使われるか、知りたく思ったためです。
あまり利用はなく、唯一森さんが使われました。
森さんがお使いになった「将来の文化を担う人材の発掘・育成」という指標は、
「使える」指標だったからだと思います。
この<使えると思った>指標に関するデータやエピソードを
どのように蓄積しておくかが、今後は鍵になってくると思います。
逆に、例えば「類似事業の実施希望が寄せられたか」とか
「多様性を発信できたか」というのは、あまりピンとこないというか、
現場が使える、使いたいものではないのかもしれません。

こんなことからも、現場がもっておきたい、それで評価してほしい情報や
データというものが見えてくるように思います。

【第7回評価ゼミ】
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■日時:2011年1月11日(火)19-21時
■会場:Tokyo Artpoint Project Room 302(アーツ千代田3331内)
■内容: 「ロールプレイング・ディベート」
アートプロジェクトには、それを取り巻くさまざまな関係者、ステークホルダーが存在します。
一つのプロジェクトは、十人十色、100人100様の視点で見ることができ、その「相手の立場に立ってみること」こそ、アートプロジェクトの評価には欠かせません。
評価ゼミ第7回となる本日は、いよいよディベートを行います。各参加者が、アートプロジェクトを取り巻くさまざまなステークホルダーの役になり、各々の立場から意見します。

■ 状況設定:
「A市アート・フェスティバル」をとりまく状況
A市では、6年前から「A市アート・フェスティバル」を行ってきた。A市が主催、担当部署はA市の文化芸術振興課。パートナーとして、地元で活発に活動を行っているNPOが事務局を担っている。総予算は開始当初は1200万円だったが、2010年の予算総額は960万だった。
このたびの財政難でA市の支出が全体的に見直されることに。文化予算も20%の減額になった。「A市アート・フェスティバル」も例外でなく、市の負担金(助成金)がカットされることになり、総予算は560万円になる見込み。
この予算では、これまでの規模や同等の質を保っての開催は厳しい。今後「A市アート・フェスティバル」を継続するかどうか―議論が分かれている。「賛成派」は、ようやく地域も人もうまくつながって軌道に乗ってきたので、規模は縮小しても継続すべき、との立場。「反対派」は、助成金がカットされたら潮時。6年の成果をまとめていったん終了しよう、との立場。
近く、「A市アート・フェスティバル」の外部評価も行われることになっている。

■「A市アート・フェスティバル」をとりまくステークホルダー(例):
• 市のフェスティバル担当者
• 市の財務担当者
• パートナーNPOの事務局スタッフ
• アーティスト
• 学校の先生
• 商店街の商店主
• 参加したことのない住民
• これまで協賛してきた企業担当者
• 議員
• 地元大学の学生ボランティア
• フェスティバルボランティアの住民
• 地元の介護老人保健施設建設推進派の住民
• 地元新聞記者

■「A市アート・フェスティバル」の評価指標
1.「A市アート・フェスティバル」の浸透度
 1)事業を実施した地域内で、「A市アート・フェスティバル」の知名度が上がったか
 2)実施地域以外から、類似事業の実施希望が寄せられたか
 3)実施分野以外から、連携の希望が寄せられたか
 4)メディアに取り上げられたか
 5)事業の実施現場が視察対象となったか
2.地域や市民の参画
 1)地域の住民が事業に参加したか
 2)地域の住民が主体的に事業を運営したか
 3)地域に特化したプログラムが展開できたか
 4)地域の既存事業と共存・共栄できたか
3.プログラム構成
 1)「A市アート・フェスティバル」の目標の達成に必要な事業が行われたか
 2)分類別(地域資源、分野連携、人材育成、メディア)に見て、手薄なところがなかったか
 3)市政の課題を鑑み、特定の分野だけでなく、様々な分野と連携したか
 4)事業実施により、当該分野や実施地域における課題解決の糸口となったか
4.A市の多様性の発信
 1)様々な個性を持つ地域、その個性を引き出す内容の事業を実施したか
 2)多様な地域資源を活用したか
5.将来の文化を担う人材の発掘・育成
 1)「A市アート・フェスティバル」の参加者が、アートプロジェクトの担い手となったか  
 2)ボランティアなど多様な人材の活用を積極的に進めたか


■ 配布資料 (セルフリサーチ資料)
アートプロジェクト・マネジメントの方法~ワークショップ・ハンドブック」(ブリティッシュ・カウンシル、2010)
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