行政の政策評価~文化庁の評価の現状

第4回評価ゼミで、講師の柴沼雄一朗さん(総務省行政評価局)から、文化庁の事業についても相当なボリュームがある細かな評価結果がまとめられている、調べれば確認可能とのお話がありました。
何がどのように評価されているのでしょうか?その手法は? 文科省や文化庁の行政評価の現状は、しっかりフォローしておきたいところ。 下記に、いくつか事例をまとめます。

■文部科学省の実施する政策評価 (文科省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/index.htm 
文科省の政策評価の方針(柴沼さんのお話にあった国の方針に沿った内容)や、「実績評価書」(H13年~)、「事業評価書(新規・継続事業)」(H14年度~)、「規制に関する評価書」(H16年~)、「総合評価書」などが公開されています。独立行政法人評価の結果も掲載(これは以下で別途説明)。

例えば…昨年度(2009年)新規事業として始まった「アートマネジメント重点支援事業」がどのような展望のもと、どのように事前評価され、公表されていたか、みてみましょう。

⇒「文部科学省事業評価書―平成21年度新規・拡充等―」 の中で、「平成21年度 文部科学省新規・拡充事業 」の「政策目標12 文化による心豊かな社会の実現」という枠の中で、新規事業として事前評価されています→ 「97.アートマネジメント重点支援事業(新規)【達成目標12-1-2】」

点検項目は、下記の通り。
◎事業の概要等
 1.事業目的
 2.事業に至る経緯・今までの実績
 3.事業概要
 4.指標と目標 ([指標] [目標] [効果の把握方法])
◎事業の事前評価結果
 A.19年度実績評価結果との関係
 B.必要性の観点
   1.事業の必要性
   2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)
   3.関連施策との関係 (①主な関連施策 施策目標12−1 、②関連施策との関係)
   4.関係する施政方針演説、審議会の答申等
 C.有効性の観点
   1.目標の達成見込み
   2.上位目標のために必要な効果が得られるか
 D.効率性の観点
   1.インプット
   2.アウトプット
   3.事業スキームの効率性
   4.代替手段との比較
 E.公平性の観点
 F.優先性の観点
 G.総括評価と反映方針
◎指摘事項と対応方針 (【指摘事項】 【指摘に対する対応方針】 )

※気になるのは、冒頭に「事業開始年度:平成21年度、事業達成年度:平成25年度」とありますが、この新規事業、1年で終わってしまったんですよね…。せっかく評価方針や目標達成度の評価指標を定めても、事業がたった1年でなくなってしまったら、事前評価の時間や労力がもったいない。 ところで、このように「事業をやめると決める/決めた時の評価」については公表されていないようです。


■文部科学省 行政事業レビュー(文科省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kouritsu/detail/1293397.htm 
予算の支出先や使途の実態を把握し、改善の余地がないか事後点検を行う「行政事業レビュー」を、文科省も実施。レビュー対象事業の事後点検内容=「レビューシート」を公表しています。
次年度概算要求への点検結果の反映状況も公表。


■文化庁レビューシート (文科省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kouritsu/detail/1295386.htm 
レビュー対象事業の「レビューシート」を個別に公開。 点検項目は次の通り:
1)予算事業名
2)事業開始年度
3)レビュー作成責任者
4)担当部長局
5)担当課室
6)会計区分
7)上位政策
8)根拠法令(具体的条項)
9)関係する計画、通知等
10)事業の目的(目指す姿)
11)事業概要
12)実施状況
13)予算の状況
14)自己点検:支出先・使途の把握水準・状況/見直しの余地
15)予算監視・効率化チームの所見
16)補記
17)資金の流れ(資金の受け取 り先が何を行っているかについて補足)
18)費目・使途(「資金の流れ」においてブロックごとに最大の金額が支出されている者について記載。使途と費目の双方で実情が分かるように記載)
19)「複数支出先ブロック」の支出先一覧(上位10機関)

ちなみに、レビュー対象となっている事業には、以下のようなものがあります(一部抜粋)。
0453 メディア芸術振興総合プログラム
0455 新進芸術家の養成・発表への支援
0456 芸術団体等が行う養成・発表機会の充実
0459 「文化芸術による創造のまち」支援事業
0460 地域人材の活用による文化活動支援事業
0461 地域文化活動活性化推進事業
0465 日本芸術院会員年金の支給等に必要な経費
0466 独立行政法人国立美術館運営費交付金に必要な経費
0469 独立行政法人日本芸術文化振興会施設整備に必要な経費
0470 文化財の維持管理等の推進
0471 文化財保護対策の検討等
0472 美術館・博物館活動の充実
0473 鑑賞・体験機会等充実のための事業推進
0491 文化政策企画立案
0492 文化ボランティア活動推進事業
0493 文化政策情報システムの整備


■独立行政法人の評価
http://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/d_kekka/main10_a11.htm 
各年度毎に、業務実績に係る評価が夏ごろ発表される(例:「平成21年度に係る業務の実績に関する評価及び中期目標に係る業務の実績に関する評価について」) 。
実際の評価結果は、法人ごとにまとめられています。文科省関係(文化系)の独法「日本芸術文化振興会」の評価も公表されています。
⇒「独立行政法人日本芸術文化振興会の平成21年度に係る業務の実績に関する評価」(PDF:1499KB) 。

※全部で86ページと膨大。これは事前の指標設定にも、評価そのものにも相当な労力がかかります。たとえ一般に公表されても、読むのだけで一苦労。行政が事業評価結果を公表することの最大の効果のひとつ=「議論の喚起」には繋がりにくいように思えます。

【最後に番外編】
■事業仕分け結果・国民から寄せられた意見と今後の取組方針について
行政刷新会議の事業仕分けの対象となった文科省の事業についてパブコメを募集。その結果を受けて発表した今後の取り組み方針。


【若林】

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